eぶらあぼ 2014.7月号
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230東京バレエ団 創立50周年 祝祭ガラ世界3大スターの競演! 東京バレエ団が誕生したのは1964年8月30日。東京オリンピックを目前にした時期だった。創立以来50年間、古典の全幕作品から現代振付家の名作に至るまで幅広いレパートリーを誇り、内外で目覚ましい活動を展開。「日本の生んだ世界のバレエ団」としての名声を確立してきた。創立50周年を記念した10本のプロジェクトが、昨年12月から来年3月にかけて開催中だが、なかでもバレエ団のバースデイに行われる〈創立50周年祝祭ガラ〉はシリーズのハイライト。当初、8月30日と31日の2日間の予定だったが、好評に応えて29日の追加公演も決まった。 このガラの最大の魅力は、半世紀の歴史を振り返る多彩なレパートリーが展望できること。バレエ団との共演回数トップ3を誇るウラジーミル・マラーホフ、マニュエル・ルグリ、シルヴィ・ギエムという3大スターを迎えて豪華な顔ぶれが一堂に会するのは、恐らくこれが最後と言われるだけに見逃せない。 プログラムは、東京バレエ団の歴史を振り返ると同時に、バレエ史及び音楽史のパノラマを見るような珠玉の名作選で、これが何とも贅沢。まずバレエ史を大きく転換させたバレエ・リュスの傑作であるストラヴィンスキー作曲、フォーキン振付『ペトルーシュカ』が、“ニジンスキーの再来”と言われるマラーホフの主演で上演されるのは嬉しい限り。19世紀バレエの巨匠プティパの名作『ラ・バヤデール』より“影の王国”は名花ナタリア・マカロワから直接指導を受けた作品で、幻想的なアンサンブルが目を楽しませる。 さらに20世紀の大振付家3人の名作が登場するのが壮観だ。東京バレエ団では、去る2月、ハンブルク・バレエを率いるノイマイヤーの初期の名作『ロミオとジュリエット』を上演し大成功を収めたばかりだが、ガラでは、詩的な美の世界を表現した『スプリング・アンド・フォール』(音楽:ドヴォルザーク)が再演される。物語バレエの金字塔と言われるクランコの『オネーギン』は2010年に初演され、好評を博したもの。今回は、オネーギン役に定評ある世界の貴公子ルグリを迎えて、全編の白眉である第3幕のパ・ド・ドゥが披露される。そして東京バレエ団と最もゆかりの深い巨匠ベジャールの『ボレロ』。ご存知ラヴェルの名曲に振り付けられた現代バレエの最高傑作の一つだが、この作品の第一人者であるギエムの客演は、特別の感慨をもたらすに違いない。 東京バレエ団の実績は海外でも高く評価され、最近作品指導のために訪れたノイマイヤーとベジャール・バレエ団のジル・ロマンからも「民間のバレエ団を50年も維持するのは大変なこと」と感嘆のエールが贈られている。5月~6月に第27次海外公演としてヨーロッパ3ヵ国を巡演し、記念プロジェクトも佳境に入った東京バレエ団。〈祝祭ガラ〉は、その活動の集大成として今夏最大のイベントの一つとなることだろう。©長谷川清徳シルヴィ・ギエム『ボレロ』ウラジーミル・マラーホフ『ペトルーシュカ』マニュエル・ルグリ『オネーギン』文:渡辺真弓©長谷川清徳©長谷川清徳8/29(金)18:30(追加公演)、8/30(土)15:00、8/31(日)15:00NHKホール 問NBSチケットセンター 03-3791-8888 http://www.nbs.or.jp
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