eぶらあぼ 2014.7月号
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150CDCDCDCDバッハ&モーツァルト:コンチェルタント/岡山潔、服部芳子、ヨナスR.シュトラウス:アルプス交響曲/フルシャ&都響能×現代音楽/青木涼子スパーク!スパーク!!スパーク!!!/スパーク&シエナ・ウインドJ.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲BWV1043、オーボエとヴァイオリンのための協奏曲BWV1060/モーツァルト:オーボエ協奏曲、2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネ岡山潔、服部芳子(ヴァイオリン)ディートヘルム・ヨナス(オーボエ)神戸市室内合奏団◎R.シュトラウス:アルプス交響曲ヤクブ・フルシャ(指揮)東京都交響楽団ガルデッラ:風の声/サニカンドロ:3つの能の歌/デュモン:山伏の祈り/エトヴェシュ:Harakiri 他青木涼子(能謡)斎藤和志(クラリネット)山根孝司(フルート)他◎ スパーク:陽はまた昇る、メリーゴーランド、宇宙の音楽、「ダイアモンド・コンチェルト」ユーフォニアム協奏曲第3番 他フィリップ・スパーク(指揮)シエナ・ウインド・オーケストラ外囿祥一郎(ユーフォニアム)収録:2013年10月、松方ホール(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7752 ¥2500+税収録:2013年6月、サントリーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00534 ¥3000+税コジマ録音ALCD-98 ¥2800+税収録:2014年1月、文京シビックホール(ライヴ)エイベックス・クラシックスAVCL-25821~2(2枚組) ¥3000+税 バロックや古典の演奏において古楽的アプローチが主流となる中、モダン楽器奏者の中には自らの美意識とは関係なく、迎合する向きも。だが、当盤に聴く神戸市室内合奏団は違う。長らく演奏の一線に身を置いてきた音楽監督の岡山は、決してブレることなく、モダン楽器ならではの表現を追究。それは驚くほど、現代的でスタイリッシュだ。共演の服部とヨナスも、ライヴとは思えぬ精緻な演奏で、岡山の情熱に応える。そう言えば、前音楽監督のゲルハルト・ボッセも、古楽偏重には否定的ながら、独自の美学に基づく瑞々しい音楽創りを続けた人だった。熱き思いは、着実に積み重なってゆく。(寺西 肇) このところ絶好調の都響が「幻想交響曲」に続き、首席客演指揮者フルシャと「アルプス交響曲」をリリースした。フルシャが指揮台に立つと、都響はインバルの時の重い音とは異なってバランスよく安定感のあるサウンドのもと、伸びやかな音楽を聴かせてくれる。フルシャは、巨大な山容がフレームに収まるちょうどいい引きのポイントを見つけてくるのが滅法うまい。これに都響の名手たちの妙技が加わって、流れるような輪郭をもった山並みが描き出されていくのだ。場面転換もスムーズで、陽光の輝きや轟く嵐、やがて落ちてくる夜のとばりまで、一連のスペクタクルに安心して身を委ねられる。(江藤光紀) 能と現代の音楽を結びつけ、独自の響きの世界を追求している青木涼子。当盤にはハンガリーのエトヴェシュら5人の作曲家への委嘱作が収められている。能の古典だけでなく、西洋の民謡の邦訳などテクストも自在に選択。共演の器楽は、時に謡の語法をトレースし、時に対置されることにより、新たな表現の可能性を纏う。そして、青木の謡も太く豊かな声のみならず、囁きやかすれすら、表現の枠の中に。器楽が言葉のニュアンスを“音”として捉えてゆく中で、なぜか言葉そのものの持つ意味が力を増してゆくのも、実に不思議。作品により、陰影が移り変わるのも心地よい。(寺西 肇) イギリスの人気作曲家スパークが自作を指揮したシエナの記念碑的コンサートのライヴ録音。描写的な音楽中心の内容は親しみやすいし、サウンドは全体にまろやかでイギリス人らしくジェントルな雰囲気が漂う。演奏は、後半の「メリーゴーランド」から俄然温度が上がり、「宇宙の音楽」の高密度かつエネルギッシュな熱演は聴き応え充分。しかし圧巻は、ユーフォニアムの名手・外囿祥一郎がソロを吹く協奏曲とアンコール。超絶技巧もさることながら、変幻自在の語り口には唖然として聴き惚れるばかりだ。幅広い時期の代表作が揃っているので、カタログとしても持っていたい1作。(柴田克彦)

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