eぶらあぼ 2014.6月号
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36第80回 東京オペラシティシリーズ★6月21日(土)・東京オペラシティコンサートホール ●発売中 問 TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511http://tokyosymphony.jp 新時代は鮮やかに始まった! 東京交響楽団&新音楽監督ジョナサン・ノットによる最初の公演だった4月のマーラーの交響曲第9番は、あらゆる音とフ時空を超えた新感触の音楽体験ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団レーズを明確に紡ぐ現代音楽寄りのアプローチで、曲の斬新な構造を表出した快演。緊張感漲る東響の“栄養価の高い”演奏と相まって、新コンビの特質を早くも印象付けた。 さて、新体制直後の2ヵ月間に4プログラムを披露する意欲的ラインアップの最後が、6月の東京オペラシティシリーズ。これはノットの妙味が最も発揮されるプログラムだ。まずはバッハ/ウェーベルン「6声のリチェルカーレ」と藤倉大「5人のソリストとオーケストラのための《Mina》」。前者は、これに先立つ6月定期で取り上げるブーレーズが得意とする曲で、プログラム構成に巧みなノットならではの選曲といえる。また、後者は国際的作曲家・藤倉が自身の娘Minaの誕生を契機に作曲した作品で、ノットが「ファンタスティック」と賞する音楽だ。特に後者は、東響が誇る4人の木管首席奏者のソロが聴きものだし、ツィターに似た打弦楽器でピアノの前身と言われる「ハンマーダルシマー」のソロも興味深い。続くはハイドンの第44番「悲しみ」とブラームスの第4番という「ホ短調交響曲」の並び。当時珍しい調性の前者はブラームスが指揮した唯一の自作以外の交響曲だというから、さすがノット! そしてもちろんロマン派の大家の同調の名作が続くことで何が見えてくるのか?が胆となる。古典と現代曲に等しいスタンスを置いて相互の新たな魅力を浮上させるノットと、精緻なアンサンブルで応える東響…このコラボレーション&プログラムは、生でこそ醍醐味を体感できる。文:柴田克彦ジョナサン・ノット Photo:N.Ikegami 唐の楊貴妃といえば、日本でも有名な絶世の美女。玄宗皇帝に愛されたものの、将軍安禄山の反乱で運命は急転。逃避行の果て、軍の不満を抑えるべく貴妃は自ら命を絶つ。その潔い最期もあって、彼女の肖像は多くの芸術作品の題材であり続けている。 さて、この6月に横浜で、この美女の悲運を描くオペラ《梧桐雨 The Firmiana Rain》が上演される(演奏会形式)。題名は元朝の同名戯曲に基づき、皇帝と貴妃の「梧桐(アオギリ)」にちなむ逸話を踏まえたものだが、筋立てには清代の崑劇『長生殿』の要素も入っているという。 2002年にニューヨークで世界初演の本作、台本と作曲を手掛けたのは台湾出身の女性、陳玫琪(メイ=チー・チェン)である。数少ない「女性が描く『楊貴妃像』」としてもなかなかに興味深い。まずは音楽が凝っていて、〈安禄山の胡旋舞〉では琵琶と木琴が軽快に絡み、月の女神の嫦娥がヒロイン楊貴妃がオペラになった!歌劇《梧ご桐とう雨う》 〜楊貴妃物語〜と戯れる場では女性4人のアンサンブルで幻想性が花開き、貴妃の死の場ではアカペラの大アリアが悲愴感を強く炙り出す。また、詩人の李白を女性が男装して演じ、東洋風の発声法で歌いきるあたりも面白いひとこま。有名な漢詩が旋律色豊かに表現されている。今回は演奏会形式での上演だが、衣裳と振付が付くのでドラマの哀歓は大いに堪能出来るはず。日中混成キャストのもと、西洋音楽と東洋の美学が溶け合う「異色の注目作」として紹介してみたい。文:岸 純信(オペラ研究家)★6月21日(土)・横浜みなとみらいホール●発売中 問 横浜みなとみらいホールチケットセンター  045-682-2000http://www.yaf.or.jp/mmh《梧桐雨》の舞台 ⒸPhoto courtesy of National Chiang Kai-Shek Cultural Center, Taiwan. Photographer: Chen Hsiang LIU

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