eぶらあぼ 2014.6月号
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ぴっくあっぷ180 マーラー研究者として、また「復活」に特化した指揮者として話題を提供してきた実業家出身の変わり種ギルバート・キャプランが、今度はその小編成版を携えてきた。巨大オーケストラに合唱とソリストを要する「復活」は上演の負担も小さくない。これはオケを半分に減らした実用的なバージョンだが、それでも通常のロマン派の交響曲を上演できる規模の56人。各セクションがはっきりくっきりとメリハリを持って浮かび上がり、普通のホールであれば演奏効果も十分のはず。曲を熟知したキャプランだけに演奏も流暢かつ規範的。リリースを機に「復活」にチャレンジしようという団体が増えるのではないか。(江藤光紀)マーラー:交響曲第2番「復活」(小編成版)/キャプラン&ウィーン室内管◎マーラー:交響曲第2番「復活」(キャプラン&マシス編/小編成版)ギルバート・キャプラン(指揮)ウィーン室内管弦楽団マーリス・ペーターゼン(ソプラノ)ヤニナ・ベヒレ(メゾソプラノ)ウィーン・ジングアカデミー 日本のピアノ界の重鎮である山根弥生子によるブラームスの作品集。山根がブラームスをテーマとしたアルバムはこれが2作目で、「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」、「シューマンの主題による」そして「創作主題による」変奏曲、などが収められている。フーガや変奏という伝統的な形式のもつ端正で華やかなさまを、山根はブラームス的な重厚さとロマン的な彩りのバランスを巧みに織り交ぜて描く。山根のピアノは決して押し付けがましくないが、ブラームスがシューマンやベートーヴェンに抱いていた敬意を伝えるかのように、誠実な熱を帯びている。(飯田有抄)山根弥生子 ブラームスを弾くVol.2ブラームス:◎ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ ◎シューマンの主題による変奏曲 ◎創作主題による変奏曲 ◎スケルツォop.4山根弥生子(ピアノ) このレーベルが日本の音楽界において、いかに孤高の存在感を確立して来たかが、体感できるだろう。今年6月で創立から40周年を迎えるコジマ録音の歩みを俯瞰する、名演のレコーディングを2枚に凝縮した記念限定盤。鍵盤楽器の武久源造ら古楽系やジャン=ジャック・カントロフを中心とした名匠による古典で構成した1枚目、木琴の通崎睦美ら使用楽器や時代も彩り豊かでアヴァンギャルドな2枚目と、見事に色分けされている。そこに滲むのは、コマーシャリズムのみに流されず、ただ「いい音を届けたい」という職人気質。それは、音楽を愛する者すべての心の琴線を揺らす。(笹田和人)コジマ録音40周年記念CD ザ・ベスト・レコーディング1974-2014◎メンデルスゾーン:オルガン・ソナタ第3番第1楽章 ◎マレ:ロンドー「優美」 ◎シューベルト:「白鳥の歌」より「鳩の使い」 ◎近藤譲:STANDING ◎ドビュッシー:喜びの島 他椎名雄一郎(オルガン)山根弥生子、小林五月、高橋アキ、高橋悠治、中井正子(ピアノ) 他 野平一郎の「展覧会の絵」とは意外な選曲の感もあるが、カップリングが一筋縄では行かない。1915年の作曲ながら、すでに図形楽譜の原理を応用しているというルリエ作品と、ロ短調という調性を取りつつも、通常の長・短調の響きがほとんど聴かれない、文字通りの「アヴァンギャルド」なモソロフ作品は傑作。「展覧会の絵」では、“響き”の面白さと多彩さに焦点が当てられた、確信犯的に徹底して“外面的な”演奏である(無論褒め言葉である)。これにより、ドビュッシーやラヴェルが何ゆえムソルグスキーにこれほど惹かれたのかが見えて来はしまいか?(藤原 聡)「展覧会の絵」〜ロシア作品愛奏曲選集/野平一郎◎ルリエ:大気のかたち ◎スクリャービン:ピアノ・ソナタ第9番 ◎モソロフ:ピアノ・ソナタop.4 ◎ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」野平一郎(ピアノ)収録:2013年2月、ウィーン・コンツェルトハウス(ライヴ)東京エムプラス OAV-2290(2枚組) ¥4000+税収録:2011年9月〜11月、府中の森芸術劇場ウィーンホールコジマ録音 ALCD-9139 ¥2800+税コジマ録音ALCD-100,101(2枚組) ¥1500+税収録:2009年4月、三鷹市芸術文化センターナミ・レコードWWCC-7753 ¥2700+税CDCDCDCD
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