eぶらあぼ 2014.5月号
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56★6月8日(日)・東京オペラシティ コンサートホール ●発売中問 光藍社050-3776-6184 http://www.koransha.comマークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます) これは奇跡だ! 今年2月の『なんでも! クラシック2014』のガラ・コンサートで、リナ・ヴァスタが歌う《椿姫》の〈さようなら過ぎ去りし日よ〉を聴いた人は、皆そう思ったであろう。80歳を超えた彼女の歌声は、美しく澄み切っており、のびやかで若々しい。弱音もまっすぐ耳に届き、精妙な歌い回しが心に染み渡る。彼女は6月に本格的な公演を行う。当然大注目だ。 彼女は35歳まで劇場に出演後、指揮者の夫の意向で引退。1984年、ヴェルディが建てたミラノの「音楽家のための憩いの家」に移り、1988年夫の死去後、歌を再開した。そして今なお現役。先日話を聞いた際も「サロン等のほか劇場でも歌っている。先日はスカラ座のコーラスと共演し、さらにオランダやドイツにも行った」と語っていた。また後進の指導も行い、「1週間に10人位の生徒を教えている」。 今回は、「《運命の力》のアリアは必ず歌う」ほか、《修道女アンジェリカ》凛として清澄な、奇跡のソプラノに酔うリナ・ヴァスタ(ソプラノ)《椿姫》のアリアやイタリア歌曲が予定されており、「最初の出演作《リゴレット》のジルダのアリアも歌う可能性がある」など楽しみがいっぱい。加えて「教え子と一緒に公演できるのは嬉しい。2人共日本人離れした声をもつ優秀な歌手」と強く推す直弟子、上江隼人、笛田博昭(共に二期会や藤原歌劇団で主役を張る実力者)の歌唱にも期待がかかる。 声を保つ秘訣を「最初に正しい歌唱法を教わったこと。横隔膜を機能させるテクニックを身に付ければ、それを失うことはない」と語り、「音楽や歌は私のすべて。皆に音楽の良さをわかって欲しい」と願う彼女。その歌声をぜひ耳にしたい。文:柴田克彦 バロックからテクノ・ミュージックまでを網羅し、コンサートホールからクラブまで様々なシーンで音楽を届けるピアニスト、フランチェスコ・トリスターノ。日本でもファンを着実に増やしているルクセンブルクの俊才が、昨年に続いて今年も来日ツアーを行う。 演目は相変わらず実に多彩。ソロ2つ、アリス=紗良・オットとのデュオという計3つの異なるプログラムを披露する。今回が初タッグとなる2人のデュオは、情熱と冷静を併せ持ったスリリングな掛け合いが楽しみだ。 ソロ公演は、東京、名古屋、西宮の3都市で開催。プログラムの中核をなすのは、30代半ばのJ.S.バッハの代表作のひとつ「フランス組曲」だ。愛妻アンナ・マグダレーナのために書バッハ作品に新たな光を当てるフランチェスコ・トリスターノ(ピアノ)かれた作品(全6曲)で、当時流行していたフランス風の舞曲にインスピレーションを得ている。トリスターノは緻密な音階を整然と彫琢しつつ、持ち前の即興性で作品の新たな魅力を十二分に引き出してくれることだろう。 名古屋公演では「フランス組曲」を全曲演奏。東京と西宮では、作曲家としても活躍する彼らしく、自作曲と十八番のJ.S.バッハを組み合わせたプログラムで臨む。J.S.バッハ作品は、「トッカータ」と、ブルガリア人ピアニスト、エミール・ナウモフ編の「コラール」も演奏予定。そして締めくくりには、トリスターノの自作曲で、「フランス組曲」へのオマージュ的な「ラ・フランシスカーナ」が置かれており、今回も斬新で瑞々しい音楽宇宙の創造に期待が高まる。文:渡辺謙太郎★6月7日(土)・三鷹市芸術文化センター(0422-47-5122)、12日(木)・名古屋/電気文化会館(052-204-1133)、14日(土)・兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)フランチェスコ・トリスターノ&アリス=紗良・オット デュオ・リサイタル★6月24日(火)・すみだトリフォニーホール(問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040)ⒸAymeric Giraudel

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