eぶらあぼ 2014.5月号
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48★6月5日(木)・東京オペラシティ コンサートホール ●発売中問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演 5/29(木)・静岡音楽館AOI、*5/30(金)・福岡シンフォニーホール、*6/1(日)・札幌コンサートホールKitara、*6/2(月)・函館市民会館、6/3(火)・武蔵野市民文化会館、*6/7(土)・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館、*6/8(日)・大阪/ザ・シンフォニーホール *牛田智大出演公演総合問合:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 「一粒で2度美味しい」とはこのことだ。シュテファン・ヴラダー指揮ウィーン・カンマー・オーケストラの公演に、ピアノの牛田智大が出演する。12歳でユニバーサルからCDデビューし、テレビ等でも話題を呼んだ牛田は、今まだ14歳。現在モスクワ音楽院ジュニア・カレッジに在籍している。ヨーロッパのオーケストラとの初共演となる今回彼が選んだのは、ショパンの協奏曲第2番。これは長年弾き込んできた愛奏曲であり、各コンクール優勝時にも選曲した自信の1曲だ。繊細さと暖かさが持ち味の彼が奏でる甘美な第2楽章は特に聴きものだし、留学での進化を知る意義も大きい。 1946年に創設されたウィーン・カンマー・オーケストラは、ゼッキ、メニューイン、ヴェーグ等の巨匠と共演を重ねてきた名楽団。最近ではアントルモンとのコンビで名を馳せた。オーストリア出身のヴラダーは、ベートーヴェン国際ピアノ・コンクールの最年少優勝者にして、確かな音楽性で評価が高い実力派ピアニスト。指揮者としても10年本場の香りとフレッシュな味の一挙両得ウィーン・カンマー・オーケストラ以上活躍し、2008年から同楽団の芸術監督を務めている。 ヴラダー率いる辣腕オーケストラの明快かつ奥深い演奏は通を唸らせ、曲が「ジュピター」等のモーツァルト作品とくれば、全面に漂うウィーンの香りが万人を酔わせること必至。彼らを聴くだけでも足を運ぶ甲斐がある。むろんピアノを熟知したヴラダーのサポートは、牛田にとっても強い味方。牛田のショパン、ヴラダーのサポート、モーツァルトの名曲、本場コンビの名奏……と聴きどころを挙げれば「一粒で3度も4度も美味しい」。文:柴田克彦シュテファン・ヴラダーⒸMartin Stöbich牛田智大ⒸAriga Terasawa 衣装提供:株式会社オンワード樫山ウィーン・カンマー・オーケストラⒸRomano Amend 新日本フィルハーモニー交響楽団と共に数々の名演を聴かせているハーディングだが、いよいよブラームスを集中して取り上げるビッグ・プロジェクト『All Brahms』がスタートする。5月から6月の3回のコンサートで、交響曲全4曲にヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲第1番を演奏するというのだ。 ブラームスの交響的作品群は、シンフォニー・オーケストラにとってレパートリーのコアとなる最重要演目だ。この山脈にどう挑み、どういう道筋で登頂するかに楽団の基本姿勢が表れてくる。ミュージック・パートナーとして4シーズン目を締めくくろうとする時期に打ち出されたプロジェクト、まさに機が熟したというべきで、指揮者、楽団ともに胸に期するところがあろう。 それぞれに違った性格を持つ4つのシンフォニーの描き分けが見所だ。第1弾、5月2日の公演は交響曲第2番と第3番を組み合わせたプログラム。ベートーヴェンが9曲の偉業を達成した後、ブラームスの真髄を聴かせるプロジェクトが始動ダニエル・ハーディング(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団新機軸を打ち出すことが難しくなっていた交響曲というジャンルに、ブラームスは新風を吹き込んだ。伝統を真正面から受け止めた第1番に対し、第2番は明るくたおやかな性質を持つ。短い期間で一気に書き上げられたが、そこには緻密な主題操作も隠れている。一方、第3番は演奏機会こそ少ないが、渋い憂愁の中にほの暗い情熱を秘めた作品だ。憂いを含んだ第3楽章の旋律は口ずさみたくなる美しさで、ポピュラー音楽の世界でもさまざまに編曲されている。 スコアにズバっと切り込んで、明快な解釈で聴き手をうならせるハーディング。伏線が縦横無尽に張り巡らされたブラームスでも、筋の通ったリードが期待できよう。文:江藤光紀All Brahms Vol.1第525回定期演奏会 サントリーホール・シリーズ★5月2日(金)・サントリーホール●発売中問 新日本フィル・チケットボックス 03-5610-3815http://www.njp.or.jpダニエル・ハーディングⒸ青柳 聡
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