eぶらあぼ 2014.5月号
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42 ブラームスのヴァイオリン・ソナタ3曲をまとめて聴くのは、充実した音楽体験だ。メランコリックな第1番「雨の歌」、親しみやすい第2番、劇的な第3番…と各々に個性があり、同作曲家の多様な魅力を一挙に堪能できる。むろん演奏には堅牢な技術と深い音楽性が求められるが、5月に3曲を弾く小林響なら申し分ない。16歳でデビューし、トロント王立音楽院を首席で卒業した彼女は、フランス国立放送フィル、ボロディン四重奏団、シュタルケル、ダン・タイ・ソン等々と共演し、カナダのA・レブランク四重奏団の第1ロマン派ソナタの最高峰を品位ある演奏で堪能小林響ひびき(ヴァイオリン)のブラームスヴァイオリン奏者も務める実力者。2009年にはサントリーホールでA・フィッシャー指揮ハイドン・フィルと共演して絶賛され、A・レブランク四重奏団ではショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全15曲のCD録音も行っている。トロントで活躍するピアニスト、モニック・ディ・マージェリーも帯同する今回は、小林の真価をじっくりと味わえる貴重な機会。趣向が異なる地方公演ともども、聴き逃すことができない。文:柴田克彦★5月31日(土)・JTアートホールアフィニス ●発売中問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jpマークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます) 近代的なチェロ奏法を確立する一方、音楽を通じての平和運動に尽力したパブロ・カザルス。その名のみならず、音楽の魂も受け継ぎ、スペインが生んだ国際的な名声を得た初のクァルテットとなったのがカザルス弦楽四重奏団だ。ヴァイオリンのアベル、チェロのアルナウのトマス兄弟を中心として、1997年にマドリッドで設立。2002年にドイツ・ハンブルクで開かれたブラームス国際弦楽四重奏コンクールを皮切りに、数々の国際コンクールを制した。以後はトップ・アンサンブルとして、欧米はもとより、アジアなど世界を股にかけ巨匠の意志を受け継ぐクァルテットカザルス弦楽四重奏団て活躍。日本での演奏を「人間が言葉を交わさずとも、いかに深く対話できるかの証明」と特に重要視している。今回は、モーツァルトの第19番「不協和音」をはじめ、リゲティの第1番「夜の変容」、ブラームスの第1番と、性格をまったく異にする3つの佳品を披露。さらに、かつてカザルスが平和への思いを託し、世界各地で弾いた「鳥の歌」を添える(神奈川公演を除く)。文:笹田和人★5月24日(土)・愛知/武豊町民会館ゆめたろうプラザ響ホール(0569-74-1211)、25日(日)・豊田市コンサートホール(0565-35-8200)、26日(月)・横浜市鶴見区民文化センターサルビアホール(045-511-5711)、27日(火)・Hakuju Hall(メロス・アーツ・マネジメント03-3358-9005) ●発売中 早いもので結成から今年で12年目。ヴィオラのタベア・ツィンマーマン、チェロのジャン=ギアン・ケラスら、欧州を代表する4人の名手で構成されるアルカント・カルテットは、強靭で柔軟、怜悧で感性豊か…と、弦楽四重奏に求められる「すべて」を備えた集団だ。世界各地で公演を行い、録音もコンスタントに発表するなど、常に多方面から注目を集め、輝きを放ち続けている。 今秋の王子ホール公演は、2012年にも好評を博した、2日連続コンサート。第1日は、ベートーヴェン「セリオーソ」、スメタナ「わが生涯より」、シューマ弦楽四重奏に求められる「すべて」を備えたグループアルカント・カルテットンの四重奏曲という、充実した合奏能力と高揚感が求められる3曲。コントラストが強く、ダイナミズムに溢れた秀演を期待しよう。続く第2日は、ベルク「抒情組曲」とハイドン「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」を対置。古典と現代を精妙に対比しながら、同時にそれらを自然な流れの中に描き出した、現代最高の解釈をまざまざと見せつける。文:渡辺謙太郎★9月26日(金)、27日(土)・王子ホール ●4月19日(土)発売問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jpⒸMarco Borggreve
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