eぶらあぼ 2014.5月号
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27実力派クァルテットの過去・現在・未来 日本では数少ない常設の弦楽四重奏団「クァルテット・エクセルシオ」が、結成20周年を迎えている。桐朋学園の同級生だった西野ゆか(ヴァイオリン)と吉田有紀子(ヴィオラ)に、大友肇(チェロ)が加わり「エクセルシオ」として1994年にスタート。のちに第2ヴァイオリンが山田百子に交代して現メンバーとなった。現在、年間70以上の公演をこなすエクセルシオだが、定期演奏会を開始したのは結成7年後の2001年のことだ。西野(以下N)「2000年頃まではコンクールが活動の中心でした」吉田(以下Y)「年齢制限もあり、コンクールを受けられる年齢までは挑戦したかったですしね」大友(以下О)「初めの頃はみんな大学の研究科だったり卒業したばかりで、オーケストラの仕事などもしながら活動していました。クァルテットだけでは食べていけませんでしたから」N「2000年にイタリアのパオロ・ボルチアーニ国際コンクールで最高位をいただいて、そろそろタイミング的にもいいだろうと、定期演奏会を始めました」 結成20周年の今年、現在、東京・京都・札幌の3都市で開催している定期演奏会には、オール・ベートーヴェン・プログラムを組んだ。ベートーヴェンはこれまでも毎回欠かさず弾いてきた、レパートリーの軸でもある。N「実は、ベートーヴェンを外して、ちょっと違う感じでやってみようかとも考えたものの…」Y「なぜ弾かないの? みたいな話になって(笑)。雰囲気を変えたいなら、逆にベートーヴェンだけにしてしまおうと考えました」山田(以下YA)「世界的にもベートーヴェンが弾きたくて始めたクァルテットが圧倒的に多いと思うので、その喜びを、20周年でたっぷり味わいたいと思います」 《弦楽四重奏の旅》という新シリーズも開始する。O「弦楽四重奏の名曲シリーズです。もちろん初めて室内楽を聴くという方も大歓迎ですが、実は、ふだんオーケストラを聴いている方を室内楽の世界につなぐ入口になればいいなという意識もあります」 毎回多彩なゲストとのコラボが楽しみな《Quartet+(プラス)》や、現代音楽を中心に新たな可能性を開拓する《ラボ・エクセルシオ》も、もちろん継続中。O「《Quartet+》は、エクセルシオではあまり演奏したことのない、シューベルトの『ます』を弾きます。ヴァイオリンが1人抜けてピアノとコントラバスが加わる五重奏なので、プラスと言っておきながらマイナスっていう(笑)。ソリストの方が集まったアンサンブルで弾く『ます』とは、たぶん違う音になると思います」YA「ラボでは、今回は声を出して叫ぶ曲があります。イェルク・ヴィドマンという、今注目されているドイツの若い作曲家の作品。最後にかなりお楽しみの部分もあるのでご期待ください(笑)」 これら主催公演だけで年間8公演を数える。О「最初年2回で始めた定期的な演奏会が、20年かかって8回に。実はこれで巌本真理弦楽四重奏団の回数に並んだなと、密かに意識していたのです(笑)。クァルテットとして定期8回というのは他にないと思うので」 新たにナミ・レコードからCDのリリースも始まる。録音スタッフとの相性も抜群だそう。О「最初にテストで録った音を聴いたら、何も問題がなかったんですよ。普通、音色とか音量のバランスとか、いろいろあるものなんですけど。この先の予定はまだ決まっていませんが、年に1~2枚ずつ録っていって、たとえば10年後に、弦楽四重奏のレパートリーのある程度のラインナップをまとめられれば。ベートーヴェンの全集録音も、もちろん考えています」 すでに日本の室内楽界を代表する存在。弦楽四重奏というジャンルの未来を担う使命も自覚している。N「今、サントリーホールの室内楽アカデミーで若い人たちを指導する機会をいただいて、いっそう強く感じているのですが、日本の弦楽四重奏全体を盛り上げなければと思っています。ある意味、危機的状況というか…。アメリカなどではクァルテットがものすごく増えているのです。それはやっぱり大学のレジデンスとして活動できる環境があるという違いも大きいのですが」О「日本でも、もっとそういう受け皿があればね」N「そうなったら楽しいですよね。今日はあそこのホールであの“チーム”を聴いて、とか。本当にいいと思います」 それを考えていること自体が頼もしいし、そういうリーダーがいればきっと良い方向に向かうはず。われわれ聴衆も、コンサートに足を運ぶことで応援したい!構成・文:宮本 明 写真:青柳 聡

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