eぶらあぼ 2014.5月号
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159 古楽から現代に至る様々なピアノ奏法に精通し、幅広いレパートリーを武器に活躍する期待の新鋭・飯野明日香が、特に力を注ぐのが現代作品の紹介。フランスを中心に活躍する12人の作品を取り上げた当盤には、彼女の思いが凝縮されている。ブーレーズら大御所から、ブルーノ・マントヴァーニら若手注目株まで、その作風は実にさまざま。変幻自在に表現が変化していくさまは、まるで万華鏡をのぞくかのよう。飯野は、それらの色彩の違いを繊細かつ大胆に掬い取ってゆく。その一方、全体を通じて、独特の空気感を共有していることも、確かに聴いて取れる。何とも不思議な感覚だ。(笹田和人)フランス・ナウ/飯野明日香◎ミュライユ:別離の鐘、微笑み ◎ブーレーズ:天体暦の1ページ ◎タンギー:5つの前奏曲 ◎ルジェ:オパールの花 ◎エスケシュ:二重の遊び ◎アミ:HAIKU ◎マントヴァーニ:明暗のための練習曲 他飯野明日香(ピアノ) ベルリン芸術大学やモーツァルテウム音楽院で研鑽を積み、現在はソロや室内楽、母校の桐朋学園音楽大学などで指導を行うなど、地道な活動を続ける中川朋子。彼女がリサイタル・プログラムとして得意としているプロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」ピアノ組曲版の録音がリリースされた。深いながらも無駄な圧力を感じさせない中川の美しい音色を通じて、この作品のピアノ曲として洗練された姿が浮き彫りになる。リストの「巡礼の年第2年『イタリア』」と「『イタリア』補遺」も端正かつ文学的香りに溢れ、満ち足りた気分に浸らせてくれる。(飯田有抄)プロコフィエフ:ロメオとジュリエット(ピアノ版)/中川朋子◎プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」より10の小品 リスト:◎巡礼の年第2年「イタリア」より「ペトラルカのソネット」第104番・第123番 ◎巡礼の年第2年「イタリア」補遺「ヴェネツィアとナポリ」中川朋子(ピアノ) 当コンビによるマーラー・ツィクルスの完結編。ライナーノーツでのジンマンの言葉「同曲はセンチメンタルに仰々しいものではまったくない」、「テーマは世を去ろうとしている命。それは悲しさだけでなく、ある種の美しさをも湛えている」を、まさしく音にした演奏だ。あらゆる声部を瑞々しく明確に表出しており、これほど“明るく美しい「大地の歌」”は他に類がない。特に終楽章終結部の精妙な美感は、もはや陶酔の極致。両歌手もコンセプトに沿った自然な歌唱を聴かせ、マーラーが生涯最後の公演で初演したブゾーニ作品も新鮮な感触をもたらす。一聴をお薦め!(柴田克彦)マーラー:交響曲「大地の歌」/ジンマン&チューリヒ・トーンハレ管◎マーラー:交響曲「大地の歌」 ◎ブゾーニ:悲歌的子守歌デイヴィッド・ジンマン(指揮)チューリヒ・トーンハレ管弦楽団スーザン・グラハム(メゾソプラノ)クリスティアン・エルスナー(テノール) 東京クァルテットの創設メンバーで、バンベルク響のゲスト・コンマスなどを歴任した名手が昨年5月に浜離宮朝日ホールで行ったライヴの記録。サイトウ・キネンや水戸室内管などで度々演奏に接してきたが、ソロの録音を聴くのはこれが初めて。今さらながら、「ああ、こんなに上手い人だったのか」と驚嘆した。ライナーにも書かれているが、全編を通じ、「どこにもよけいな力が入っていない」。恣意的な抑揚やアクセントなどを一切排しながら、モーツァルト、ウェーベルン、ドビュッシー、ショーソン、いずれも音楽の純粋な美しさをありのままに提示しているのが素晴らしい。(渡辺謙太郎)ヴァイオリン・リサイタル2013/名倉淑子◎モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタK.454 ◎ウェーベルン:4つの小品 ◎ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ◎ショーソン:詩曲名倉淑子(ヴァイオリン)橘高昌男(ピアノ)収録:2014年1月、東京、ヤマハホールカメラータ・トウキョウCMCD-28302 ¥2800+税収録:2013年4月、稲城市立iプラザナミ・レコードWWCP-7148 ¥2500+税収録:2012年10月,11月、チューリヒ、トーンハレソニーミュージックSICC 10210 ¥2800+税収録:2013年5月、浜離宮朝日ホール(ライヴ)ソナーレ・アートオフィスSONARE 1022 ¥2400+税SACDCDCDCD

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