eぶらあぼ 2014.5月号
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ぴっくあっぷ158 アンスネス&マーラー室内管による「ベートーヴェンへの旅」第2弾は、ピアノ協奏曲第2番&第4番。ここでアンスネスは弾き振りを行なっているのだが、まずこの「振り」がよい。イキイキと弾むリズム、立体的な音響バランス、細心のニュアンスとフレージング(ヴィブラートを抑制した弦楽器群の「右手の」雄弁さ)。第2番冒頭の数十秒で感心。いや、素晴らしい。もちろん「弾き」も大変見事で、例えば第2番や第4番の終楽章では、若やいだ推進力の中に豊富な表情を織り込んでいて秀逸。何気ない風情のピアノながら、じっくり聴くほど味わいが増す。(藤原 聡)ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番&第4番/アンスネスベートーヴェン:◎ピアノ協奏曲第2番 ◎同第4番レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ、指揮)マーラー・チェンバー・オーケストラ 異次元へとワープするような、不思議な感覚が味わえる。カウンターテナーの旗手として、演奏活動のみならずステージ・プロデュースや執筆などマルチに活躍する彌勒忠史。そんな彌勒がリュートの高本一郎と挑む細やかな、しかし壮大なる試みが当盤。18世紀に全盛を極めた男性高音歌手が、16世紀のリュートソングの形式を借り、19・20世紀の楽曲を歌うと一体どうなるか? といった趣向だ。実際に耳にしてみると、違和感がないどころか、「オ・ソレ・ミオ」など聴きなれた楽曲が、まったく新たな魅力を纏っていることに驚かされる。ぜひ一聴をお勧めしたい。(寺西 肇)古楽仕立てのカンツォーネ/彌勒忠史&高本一郎◎太陽の地 ◎可愛い口元 ◎マレキアーレ ◎シチリアーナ ◎帰れソレントへ ◎フニクリ・フニクラ ◎忘れないで ◎オ・ソレ・ミオ 他彌勒忠史(カウンターテナー)高本一郎(アーチリュート、バロックギター) 第1回芥川作曲賞の受賞者でもある高橋裕。粘り強く密度の高い世界を構築していくが、寡作ゆえ作品に接する機会は多くない。そんな高橋の室内楽全集が発売された。たった5作。だが聴き応えがある。静寂から生命が胚胎するようにゆっくりと膨らんでいく部分と、錯乱したように狂おしく舞踏しながら強烈なエネルギーを放出する部分が振幅を作り、雄大な時間感覚を生む。息の長いポテンシャルの集積とそこで表現される仏教・アジア的な世界観は、師・松村禎三の影響を感じさせるだけでなく、その先の「宇宙の相」をも見据えている。澤和樹を中心とする演奏者たちも集中力をもって楽曲に向かっている。(江藤光紀)宇宙の相を聴く〜高橋裕 室内楽作品集高橋裕:◎弦楽四重奏曲 ◎「プラーナ」〜ヴァイオリンとピアノのための ◎「アハウ・カン」〜無伴奏ヴィオラのための ◎ピアノ五重奏曲 ◎六重奏曲「迦桜羅」澤和樹(ヴァイオリン)蓼沼恵美子(ピアノ)須田祥子(ヴィオラ) 他 演奏は勿論だが、音質の良さも実に魅力的な1枚。Hakuju Hallの優美で臨場感に溢れた音響を余すところなく捉えることに成功している。ベートーヴェンの後期作品中で最も長大な第15番の後、さらに「大フーガ」が続く。聴きごたえたっぷりの超重量級プログラムだ。第15番は、細部まで徹底的に吟味した含蓄の深い表現に脱帽。中でも、第3楽章の崇高で確信に満ちた足取りは何度聴いても胸を打たれる。そして、彼らがオーケストラの同僚として長年培った緻密なアンサンブルの集大成とも言える「大フーガ」。力強さと伸びやかさを最良の形で備えた名演だ。(渡辺謙太郎)ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番,大フーガ/ヴィルトゥオーゾ・カルテットベートーヴェン:◎弦楽四重奏曲第15番 ◎大フーガヴィルトゥオーゾ・カルテット[齋藤真知亜、大宮臨太郎(以上ヴァイオリン)、 店村眞積(ヴィオラ)、藤森亮一(チェロ)]収録:2013年11月、ロンドン、聖ジュード教会ソニーミュージックSICC 30152 ¥2600+税収録:2013年9月、東京、OMF M-SalonOMFKCD-2041 ¥2381+税収録:2003年〜2014年、東京文化会館(ライヴ) 他カメラータ・トウキョウCMCD-99079〜80(2枚組) ¥3500+税収録:2013年11月、Hakuju Hall(ライヴ)マイスター・ミュージックMM-2178 ¥2816+税CDCDCDCD
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