eぶらあぼ2014.4月号
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177 知られざる作曲家、リヒャルト・レスラー(1880 〜1962)に光を当てたシリーズ第3弾。ラトヴィア生まれのレスラーは、ブルッフ等に学び、時代に反する平明でロマンティックな作品を生み出した。本作のチェロ曲と三重奏曲は、自身の子供たちのために書かれた明快な“家庭音楽”であり、ピアノ曲も洒落たサロン風の音楽。特に、ブラームスの流れを汲むソナタやメロディアスな小品等のチェロ曲は、レパートリーになっても不思議ではない。作曲者の孫アレクサンダーのピアノを軸とする演奏も、曲の魅力を伝えるに充分。とにかく聴いて損はない佳品集だ。(柴田克彦)レスラー:チェロ・ソナタ 他/レスラー&ミュラー 他レスラー:◎チェロ・ソナタ ◎ワルツ・メランコリック ◎ロマンス ◎チェロとピアノのための民謡主題による変奏曲 ◎少年少女のための三重奏曲〜ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための 他アレクサンダー・レスラー(ピアノ)カリーン・アダム(ヴァイオリン)オトマール・ミュラー(チェロ) スロヴェニアの知られざる巨匠アントン・ナヌート、話題となった2009年の来日に続き、昨年2月に紀尾井シンフォニエッタへ再登板した記録がリリースされた。最初に収録されたブラームスの交響曲第4番が、その芸風をよく表している。小型編成のオーケストラを自在に操り、コンパクトながら筋肉質の音楽を構築していく。とりわけ終楽章のパッサカリアでは、ひきしまった歩みの中に絞り出すような弦楽器の哀歌や管楽器の広がりのあるコラールが差し挟まれ、熱量の高い結尾まで緊張感と説得力をもって運んでいく。同郷人コゴイの「弦楽のためのアンダンテ」は後期ロマン派風の不安感と憂いを帯びた佳作だ。(江藤光紀)ブラームス:交響曲第4番 他/ナヌート&紀尾井シンフォニエッタ◎ブラームス:交響曲第4番 ◎ワーグナー:ジークフリート牧歌 ◎コゴイ(アヴセネク編):弦楽のためのアンダンテアントン・ナヌート(指揮)紀尾井シンフォニエッタ東京 白石光隆の新譜は、昨年9月に東京文化会館で行われたリサイタルのライヴ録音である。ライヴとは信じ難いほど、組曲「展覧会の絵」はクリアな音質と品位に満ちたスマートな演奏である。一聴すると淡白に感じられる録音かもしれないが、聴き込んで行くと、実にきめの細かい解釈とその表現に彩られていることに気付き、その構築性にどんどん引き込まれていく。スカルラッティの4曲のソナタではバロック特有の軽やかで活力に満ちた白石のタッチに、ホールの残響が絶妙にからむ。ベルクのソナタに至っては、白石のハイセンスな叙情性があますところなく発揮されている。(飯田有抄)ムソルグスキー:展覧会の絵/白石光隆◎ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」 スカルラッティ:◎ソナタL.424・366・118・391 ◎ベルク:ピアノ・ソナタ白石光隆(ピアノ) 東京芸大から同大学院に学び、ウィーンで研鑽を積み、オペラや宗教作品で第一線ソリストとして活躍する小川明子。その一方、公私ともにパートナーであるピアノの山田啓明と共に、日本歌曲の紹介にも継続的に力を注ぐ。当盤は、約10年前に発表した「歌曲選」に続く第2弾。「早春賦」「椰子の実」「荒城の月」など、日本人なら誰しも郷愁を覚える名曲の数々が、豊かで温かな歌声で収められている。特に印象的なのは、一つひとつ丁寧に歌い込まれてゆく言葉の美しさ。ステージを重ねる中、きっと聴き手の思いまで吸収して、これほどの深みと説得力を持つに至ったに違いない。(笹田和人)早春賦〜日本歌曲選2/小川明子◎早春賦 ◎浜辺の歌 ◎椰子の実 ◎荒城の月 ◎白月 ◎宵待草 ◎城ヶ島の雨 ◎出船の港 ◎母 ◎ゆふかげ草 他小川明子(アルト)山田啓明(ピアノ)収録:2010年9月,2011年7月、ウィーン、プルゴアン宮殿,冬の庭カメラータ・トウキョウ CMCD-28300 ¥2800+税収録:2013年2月、紀尾井ホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00508 ¥3000+税収録:2013年9月、東京文化会館(ライヴ)マイスター・ミュージックMM-2175 ¥2816+税収録:2013年9月、三鷹市芸術文化センターナミ・レコードWWCC-7745 ¥2500+税CDCDCDCD
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