eぶらあぼ2014.4月号
167/199

ぴっくあっぷ176 1986年フランクフルト放送響盤、2007年都響盤に続くインバル3つめの「悲劇的」。細部への目配りと楽曲全体の流れの良さが両立した名演だ。特に素晴らしいのが第1楽章の第2主題や第3楽章などの歌謡部分での歌い口。テンポを自在に伸縮させ、テヌートとアクセントを駆使してとにかくうねらせる。従来のこの指揮者の同曲演奏とはまた一味違ったホットな一面を見せている。そして長大な終楽章の見通しの良さは特筆に値する。各部分のテンポ設定や表情の変化の見事さゆえだ。恐らく、ここまで分りやすい「悲劇的」終楽章の演奏はこれまでなかったのではないか。(藤原 聡)マーラー:交響曲第6番「悲劇的」/インバル&都響◎マーラー:交響曲第6番「悲劇的」エリアフ・インバル(指揮)東京都交響楽団 共にソリストとして国内外での活躍めざましいヴァイオリンとピアノによる同年代デュオ。2人は20代の終わりから活発にリサイタルを行って30代を迎え、リリースされるCDも今回で4枚目を数える。ブラームスが完成させた3つの崇高なヴァイオリン・ソナタのうちすでに2つを録音済みの二人が、最後に残していたのはスイスのトゥーン湖のほとりで生まれた第2番。明るくのびやかな情緒をたたえつつもアルプスを思わせる雄大さと力強さに富んだ演奏で聴かせる。一方のR.シュトラウスでは青年時代の彼のエネルギッシュな才気と官能性がほとばしるかのような妙演で魅せる。(東端哲也)デュオVol.4/松山冴花&津田裕也◎ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ◎R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ松山冴花(ヴァイオリン)津田裕也(ピアノ) 熱と気迫、そして清塚信也の魅力がダイレクトに伝わる映像だ。昨年11月に東京オペラシティで行われた『K'z PIANO SHOW』の全貌を収録。前半はベートーヴェンとドビュッシーの“月光”の対比から始まり、ショパンとリストの対決を展開。曲間のトークは笑いを誘いつつ音楽史のエッセンスを伝え、説得力十分。後半の清塚オリジナル作品では音色の美質を存分に披露し、ガーシュィン・メドレーで見せつけるテクニックは圧巻としか言いようがない。録画でありながら生気に満ちた臨場感に包まれ、「楽しさ」が次第に震えるような「感動」へと変わる。(飯田有抄)THE LIVE 清塚信也ドビュッシー:◎月の光 ◎アラベスク第1番 ショパン:◎ノクターン第2番 ◎幻想即興曲 ◎英雄ポロネーズ 清塚信也:◎vision ◎日々 ◎ポンセ:間奏曲 ◎ガーシュイン・メドレー 他清塚信也(ピアノ) 昨年の第5回仙台国際音楽コンクールのヴァイオリン部門を制した台湾系アメリカ人のリチャード・リン。そのセミファイナルからファイナルまでの演奏がありのままに記録されたライヴ盤だ。ベートーヴェン、バルトーク、ブラームスと演奏を重ねる中で、持ち前の温かく澄んだ音色が精彩を増し、オーケストラとの一体感も着実に強めていった過程がよくわかる。広い視野で端正に作品を織り上げることがいかにかけがえのないことであるかを教えてくれる。ブラームスの緩徐楽章における、抒情美の極致とも言えるきめ細やかさは、その際たる例だ。(渡辺謙太郎)リチャード・リン〜第5回仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門優勝◎ベートーヴェン:ロマンス ト長調 ◎バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番 ◎ブラームス:ヴァイオリン協奏曲リチャード・リン(ヴァイオリン)パスカル・ヴェロ(指揮)仙台フィルハーモニー管弦楽団収録:2013年11月、横浜みなとみらいホール,東京芸術劇場(ライヴ)オクタヴィア・レコード OVCL-00516 ¥4200+税収録:2013年9月、品川区立文化センターナミ・レコードWWCC-7746 ¥2600+税収録:2013年11月、東京オペラシティ(ライヴ)日本コロムビアCOBO-6524 ¥3800+税収録:2013年6月、日立システムズホール仙台(ライヴ)フォンテック FOCD9612 ¥2400+税CDCDSACDDVD

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です