eぶらあぼ2014.4月号
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175 イタリアを中心に活躍する実力者たちによる、リストの知られざる室内楽作品集。前半の3曲はピアノ三重奏曲。中央に置かれた「悲哀、オーベルマンの谷」は、作曲者自身による晩年の編曲だ。3つの楽器の濃密な掛け合いは、原曲よりもほの暗く深みのある音色が特徴。それは、孤独や希望を鮮やかに綴った原曲から40年以上を経て改訂に踏み切った、当時の彼の諦観の境地の表れだったのかもしれない。後半に並ぶ5曲はチェロとピアノの二重奏。作曲や編曲の経緯は様々だが、いずれもチェロが好演。寂寥感を帯びた旋律を艶やかな美音で淡々と歌い上げている。(渡辺謙太郎)リスト:ピアノ三重奏曲集/カテーナ&フランチェスキーニ&カサディリスト:◎交響詩「オルフェウス」[サン=サーンス編] ◎悲哀、オーベルマンの谷 ◎ハンガリー狂詩曲第9番「ペシュトの謝肉祭」(以上ピアノ三重奏版) ◎エレジー第1番・第2番 ◎悲しみのゴンドラ(以上チェロ&ピアノ版) 他コスタンティーノ・カテーナ(ピアノ)パオロ・フランチェスキーニ(ヴァイオリン)クラウディオ・カサディ(チェロ) 確かに「吹奏楽」には区分されるのだろうが、吹奏楽目線は勿論、クラシック目線で接しても大変面白い。と言うよりも、いわゆる「クラシックファン」にもぜひ聴いていただきたい名盤。当盤の面白さは演奏が見事なのは勿論、「ダフニスとクロエ」や「サロメ〜七つのヴェールの踊り」といったクラシックファンならばご存知であろう名曲が、吹奏楽編曲が施されることでディテールがより明快になったり、楽曲の構造が良く伝わるようになったりと、逆に本質的な部分が露になる瞬間が多々ある。R.シュトラウスの歌曲集編曲なども入っており、一筋縄では行きません。(藤原 聡)ダフニスとクロエ/サロメ/金聖響&東京佼成ウインドオーケストララヴェル:◎バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲 ◎ラ・ヴァルス R.シュトラウス:◎交響詩「ドン・ファン」 ◎歌曲集より「献呈」「明日の朝」「万霊節」 ◎楽劇《サロメ》より〈七つのヴェールの踊り〉金聖響(指揮)東京佼成ウインドオーケストラ 巨匠ケンプが1961年の来日で披露した、ブラームスの協奏曲を核としたライヴ盤。抑制を効かせた弾き始めから、徐々に大胆さを増す第1楽章、精神の内面に染み入る第2楽章、そして圧倒的な畳み掛けの最終楽章と、紛れもない名演だ。特筆すべきは、東京交響楽団の気迫あふれる熱演。長い序奏に始まって、往年のドイツもかくやの重心の低いサウンドを標榜しつつ、巨匠を相手に一歩も引かない丁々発止の熱演を展開している。そして、当盤でまるで後奏のように添えられる、ベートーヴェンの小品の洒落っ気、続く拍手の音楽的なこと! ケンプが日本の聴衆を愛した理由までもが理解できよう。(寺西 肇)ブラームス:ピアノ協奏曲第1番/ヴィルヘルム・ケンプ◎モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲 ◎ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ◎ベートーヴェン:6つのエコセーズヴィルヘルム・ケンプ(ピアノ)上田仁(指揮)東京交響楽団 これは痛快。ホルンが持つ底力と可能性を、存分に知らしめられよう。日本人管楽器奏者として、初めてバイロイト音楽祭に参加した山岸博ら“百戦錬磨”の達人が結集したホルン四重奏団。そのアルバム第一弾が、最新リマスターを経て復活した。アルバム・タイトルにも冠した、ハイドンの交響曲から聴かせどころをピックアップした編曲作品のほか、超絶技巧と歌心を併せ持つホルン四重奏のためのオリジナル作品を収録。ぴたりと合わさったハーモニーやリズムの美しさには、思わず溜め息が。続けて、「ホルンって、ここまでやれるのか」と漏らしてしまうこと、必至である。(寺西 肇) ホルン・シグナル/ジャパン・ホルン・クァルテット◎ハイドン:交響曲第31番「ホルン・シグナル」より第1・第3楽章 ◎ボザ:4つのホルンのための組曲 ◎カステルヌオーヴォ=テデスコ:4つのホルンのためのコラールと変奏 ◎ターナー:ホルン四重奏曲第2番「アメリカーナ」ジャパン・ホルン・クァルテット[山岸博、一色隆雄、久永重明、西條貴人 (以上ホルン)]収録:2011年6月,2012年3月、イタリア、ウンベルティーデ、聖クローチェ美術館カメラータ・トウキョウ CMCD-28299 ¥2800+税収録:2012年2月,2013年2月、東京文化会館,東京芸術劇場(ライヴ)日本コロムビア COCQ-85051 ¥2000+税収録:1961年10月、東京厚生年金会館 他(ライヴ)ユニバーサルミュージック TYGE-60019 ¥3143+税収録:1999年6月、フィリアホールマイスター・ミュージックMM-2176 ¥2816+税CDCDSACDCD
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