eぶらあぼ2014.4月号
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この人いちおし172【CD】『レスピーギ:ローマ三部作』アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団レスピーギ:◎交響詩「ローマの祭」 ◎同「ローマの噴水」 ◎同「ローマの松」2013年5月31日・サントリーホールでのライヴ録音日本コロムビアCOGQ-68(SACDハイブリッド盤)¥2800+税アンドレア・バッティストーニ(指揮)Andrea Battistoniレスピーギは“イタリア的なるもの”を深化させた作曲家です 1987年生まれ。若手指揮者の台頭著しいイタリアでもひときわ注目を浴びる「超新星」、アンドレア・バッティストーニ。2012年、24歳の若さで二期会公演《ナブッコ》を振って日本デビュー。翌年5月には《ナブッコ》で共演した東京フィルの定期公演でレスピーギ『ローマ三部作』を披露、ローマの風景や空気が立ち上がってくるような鮮烈な演奏で会場を総立ちの熱狂に巻き込んだ。このたびその『ローマ三部作』がリリースされたが、録音を聴き、本作の上演史上に残る名演だと改めて確信した。バッティストーニにとっては日本で初めてのCDでもあるが、自身の満足度はどうだろうか。 「とてもうまくいった手応えを感じています。コンサートも素晴らしい想い出ですし、オーケストラにとってもレベルの高い、誇ることのできる演奏になったのではないでしょうか。私自身、レスピーギの精神を捉えることができたと思うし、イタリアのかけらを日本に持ってくることができて満足しています」 『ローマ三部作』といえば、イタリアのオーケストラ音楽の代名詞のような作品だ。バッティストーニのレスピーギ観、そして『ローマ三部作』観は? 「イタリアのオーケストラ作品、とくに20世紀のそれはとても面白いのですが、残念ながらオペラほどには知られていません。レスピーギは“イタリア的なるもの”を深化させた作曲家です。同時代のリヒャルト・シュトラウスやストラヴィンスキーの影響もありますが、表現はとてもイタリア的です。彼は、オーケストラの音響によって圧倒的な物語を紡ぐ方法を知っていました。代表作である『ローマ三部作』は、20世紀のイタリアのオーケストラ作品に親しむにもぴったりの作品です。彼はここで、イタリアの芸術、田舎の風景、人々、彼のローマへの愛といったものを、オペラ的な感情の形としてオーケストラ作品に結実させています。『ローマ三部作』では、聴き手はすぐさま、その時代へと連れて行かれてしまうのです」 東京フィルとは《ナブッコ》以来共演を重ね、息もぴったりだ。 「東京フィルの印象は良くなる一方です。広く多彩なレパートリーを持ち、技術的なレベルも高い。お互いをよく聴いているし、音楽することを楽しみ、一緒に危険を冒してくれるチャレンジ精神がある。東京フィルと仕事ができるのはとても嬉しいことです」 来年2月には再び二期会に登場し、《リゴレット》を披露。その前後も大舞台が続く。 「《リゴレット》は大好きなオペラです。アンチヒーローを主人公にした物語も画期的ですし、音楽も前作から格段の進歩を遂げています。怒りや涙がダイレクトに伝わる。この作品を指揮できるのはとても嬉しいですね。他には、今年の5月には首席客演指揮者を務めるジェノヴァの劇場で《カルメン》、夏にはヴェローナ音楽祭で《仮面舞踏会》を振ります。どちらも初めての演目で、とても楽しみにしています。ヴェローナ生まれなのでアレーナのオペラに触れて育ちましたが、子供にはとてもいい環境だったと思っています」 かつてはロックバンドでも演奏し、クラシック音楽の入門書も出版するなど若くして多彩な活動を繰り広げてきたバッティストーニ。彼が最終的に選択したクラシック音楽の魅力とは? 「クラシック音楽は多彩で密度が濃く、強く、深い感情を表わすのに向いている。一度その魅力を知ると、他の音楽を選ぼうとは思いません。私のように、一人の人間の人生そのものになりうる力のある音楽ですから」取材・文:加藤浩子©Roberto Masotti

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