eぶらあぼ 2014.3月号
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34ラザレフが刻むロシアの魂《SeasonⅡ スクリャービン2》第658回 東京定期演奏会 ★3月14日(金)、15日(土)・サントリーホール ●発売中問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp★4月13日(日)・よこすか芸術劇場●発売中 問 横須賀芸術劇場  046-823-9999http://www.yokosuka-arts.or.jp 音楽祭などでマスタークラスとコンサートを両方行う演奏家は、口を揃えて「いつも以上に緊張する」と話す。むろん受講者の手前、下手な演奏はできないからだ。それがコンクールの審査員となればなおさらだろう。2006年に始まった「野島稔・よこすかピアノコンクール」では、例年、審査委員によるコンサートが行われている。日本を代表する国際派ピアニスト・野島稔とプロ音楽家たちの自負をうかがわせる同公演は、スリリングな魅力充分。一般ファンもぜひ注目したいところだ。 今年のコンサートはとりわけ興味深い。5人の審査委員がベートーヴェン熟達の至芸と巨匠の変遷を、同時に知る醍醐味野島稔・よこすかピアノコンクール審査委員によるベートーヴェン ピアノ協奏曲のピアノ協奏曲全5曲を、立て続けに弾く。奏者は1番から順に、迫昭嘉、若林顕、神谷郁代、野平一郎、野島稔。いずれも地に足のついた活動で信頼も厚い、筋金入りの名手たちだ。公演の妙味は数多い。まずは、同一作曲家の同一形態の作品を聴くことで、各ピアニストの音色やタッチ、アプローチなどの違いを目の当たりにできる。それと同時に、名うてのベテランの至芸を続けて聴くことは、音楽家それぞれの円熟の在り方を知る貴重な体験となる。そしてまた、ベートーヴェンの作風の変遷や成熟の軌跡と、当時顕著だったピアノの進化の過程を、真に実感できる。 バックも広上淳一指揮の東京交響楽団だから態勢は万全。そもそもベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を一挙に味わえるチャンスは少ない(稀にあってもまず単独のピアニストによる)し、かように様々な意義をもった公演は稀有ともいえる。約3時間半の長丁場だが、会場に参じて全うする価値は計り知れない。文:柴田克彦迫 昭嘉ⒸAkira Muto若林 顕ⒸWataru Nishida神谷郁代野平一郎野島 稔ⒸChristian Steiner 首席指揮者アレクサンドル・ラザレフと日本フィルによる好調ロシア音楽シリーズの次回は、「ラザレフが刻むロシアの魂《SeasonⅡ スクリャービン2》」。スクリャービンのピアノ協奏曲と、翌シーズンの予告編ともいうべきショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」という、聴きごたえのある2曲が並べられた。 スクリャービンのピアノ協奏曲には、作品とソリストの両面から注目したい。20代半ばの作曲者による初期の作品で、演奏機会は少ないが、甘美で豊潤なロマンティシズムに満ちた協奏曲で、ほとんどショパンを連想させるほど。後に神秘主義に傾倒する作曲者にこんな麗しい青春時代があったとは…と感じ入りつつも、そこにスクリャービン独自の個性が刻印されていることを発見できるはず。ソリストは2011年の日本音楽コンクール ピアノ部門の優勝者、浜野与志男。父は強い求心力と周到な音楽作りアレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団日本人、母はロシア人で、ロシア音楽を得意とする俊英だ。1989年生まれで、年齢的にも作曲時のスクリャービンに近い。才気と共感にあふれた好演を期待したい。 ショスタコーヴィチの「レニングラード」は、言うまでもなく作曲者代表作のひとつであり、屈指の大作。凄烈なエネルギーを内包する作品だけに、ラザレフの強い求心力と、ディテールを疎かにしない周到な音楽作りが活きるにちがいない。文:飯尾洋一浜野与志男ⒸKei Uesugiアレクサンドル・ラザレフⒸ山口 敦

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