eぶらあぼ 2014.3月号
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32 確かにロマン派は“うた”の音楽だ。活発な演奏活動と信頼の厚い教授活動(現・東京芸大副学長)を両立してきた名ヴァイオリン奏者・澤和樹が、1976年からコンビを組むピアノの蓼沼恵美子と共に、シューベルト、シューマン、ブラームスのヴァイオリンまたはヴィオラ&ピアノ曲のシリーズ(全4回)を行う。これは、シューベルトのソナチネや「アルペジオーネ・ソナタ」、シューマンのヴァイオリン・ソナタ2曲、ブラームスの両楽器のソナタ5曲など、主要な名作をまとめて聴ける得難い機会だ。そして「今回は、ロマン派の巨人たちが、リートの分野で偉音楽は“うた”に始まり“うた”に終わる澤和樹(ヴァイオリン)&蓼沼恵美子(ピアノ)デュオ 〜シューベルト、シューマン、ブラームスをうたう〜大な功績を残した点に改めて着眼してみたい」と澤は語る。さらには「歌曲王シューベルトは言うに及ばず、ブラームスの自作歌曲とヴァイオリン・ソナタとの関連は明らかだし、シューマンの緩徐楽章などでは、ドイツ語の歌詞が聴こえて、物語が思い浮かぶ」とも。ここに視点を置けば、シリーズを聴く妙味はいっそう深まる。内外で評価も高いベテラン・デュオならではの“うた”に、じっくりと耳を傾けたい。文:柴田克彦Vol.1 3月15日(土)、Vol.2 6月8日(日)、Vol.3 12月14日(日)Vol.4 2015年3月15日(日) 会場:Hakuju Hall Vol.1のみ発売中問 アスペン03-5467-0081 http://www.aspen.jp 数々の伝説的ピアニストから薫陶を受け、ウィーン楽派の伝統を今に伝えるイェルク・デームスが、今年も日本にやってくる。85歳の現在も精力的な演奏活動を続ける巨匠。今回の京都リサイタルでは、実に充実したプログラムでその音楽の神髄を示してくれる。 前半、バッハやモーツァルトに加えて演奏されるのは、ベートーヴェン最後のピアノソナタだ。これには期待せずにいられない。デームスは、ベートーヴェンのソナタの解釈について著書もあるほど、長きにわたってその世界の探求を続けてきた人だ。演奏活動70長いキャリアでこそ表現できる音楽イェルク・デームス(ピアノ)余年という人生の境地に立ってこそ表現できる深遠な音楽に、我々は一体何を見ることになるだろうか。そして後半は、ショパンのバラード第4番、シューマンの「クライスレリアーナ」と、詩情に満ちた作品が並ぶ。生の演奏に触れて初めてわかる、音楽から豊かに立ち上る空気感。気品とエネルギーに満ちたデームスの演奏を肌で感じ、その精神に触れる、貴重な機会だ。文:高坂はる香★4月12日(土)・京都府立府民ホール・アルティ ●発売中問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp 東京文化会館が2005年から続けている、毎月1回開催の好企画『モーニングコンサート』。ランチ前の1時間、ワンコインで聴くフレッシュな才能東京文化会館モーニングコンサート Vol.79 またのき木亜裕美(クラリネット)ワンコインの500円で気軽に名曲を楽しめるとあって、美術館や博物館などとあわせて毎月のように訪れる熱心なリピーターも少なくないという。出演者は「東京音楽コンクール」入賞の若手アーティストたち。演奏曲にそれぞれが最も思い入れのある楽曲を含ませ、本人によるトークも毎回好評だ。 3月開催の第79回には同コンクール2009年の木管部門で第1位に輝いたクラリネットの木亜裕美が登場。現在、洗足ニューフィルハーモニック管弦楽団に所属する彼女は、これまでに日本フィルや都響とも共演。別府アルゲリッチ音楽祭や小澤征爾音楽塾にも出演した注目株。ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」や時代の歌である「花は咲く」などからどのような想いを紡ぎ出してくれるのか、楽しみだ。文:東端哲也★3月11日(火)・東京文化会館 ●発売中問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jpマークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます)

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