eぶらあぼ 2014.3月号
32/195

29第620回 定期演奏会★5月24日(土)・サントリーホール●発売中問 TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511http://tokyosymphony.jp第83回 新潟定期演奏会★5月25日(日)・新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ●2月22日(土)発売問 りゅーとぴあ025-224-5521http://www.ryutopia.or.jp それは黄金時代と言っていい。ユベール・スダーンが東京交響楽団の音楽監督に就任して10年。彼は、シーズンごとにテーマを据えて多大な成果を挙げ、丁寧に磨き抜かれたアンサンブル、しなやかに呼吸する音楽で高い評価を獲得した。そしてこの3月、惜しまれつつ勇退する。 だが彼は、5月定期に戻ってくる。この早さは楽団との佳き関係を示す稀有な例ともいえるが、当公演は音楽監督としての番外・特別編的な意味がある。なぜなら、大震災で変更された2011年3月定期の演目であるベルリオーズの「テ・デウム」が披露されるからだ。作曲者の宗教音楽を代表する同曲は、4管のオーケストラに2群の混声合唱や児童合唱(実際はともかく、指定は600人!)などを加えた巨大編成曲。エネルギッシュな面のみならず、優美な局面も魅力を放つ傑作で、声楽大曲に実績ある東響&東響コーラスの底力が存分に発揮される。他の10年の蜜月への感謝をこめてユベール・スダーン(指揮) 東京交響楽団プログラムは、スダーンの精緻な活力が生きるベルリオーズの「ローマの謝肉祭」序曲とペンデレツキの「3つの中国の歌」。後者は「李白などの漢詩に着想を得た、どこか日本的な響きも感じられる美しい曲」(楽団より)なので、こちらも楽しみだ。独唱はオーストリアのバリトン歌手、マルクス・ヴェルバ。彼は世界のトップ歌劇場の常連で、サントリーホールのホール・オペラR『ダ・ポンテ三部作』でも確かな歌唱を聴かせている。 「テ・デウム」は、生では滅多に聴けないだけに、このチャンスを逃してはならない。そして、やり残した演目で東響とファンへの思いを遂げるスダーンに、今一度感動の拍手を送りたい。文:柴田克彦マルクス・ヴェルバユベール・スダーン★4月9日(水)・東京オペラシティコンサートホール ●発売中問 ジャパン・アーツぴあ  03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演 4/6(日)・兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)、4/8(火)・武蔵野市民文化会館(0422-54-2011) アンスネスのリサイタルでいつも感心させられるのは、その響きのピュア度である。彼ぐらいの知名度になるとホールは中小というわけにはいかない。大ホールだ。ソロで大きなホールを無理に響かせようとすると、サウンドが毛羽立ったり、音楽にヘンな力みが加わってしまうのは、それなりのベテランでも時折耳にする。だがアンスネスが弾く楽器からは、いつも素直な音がベートーヴェンへのトータルな視点を伝えるレイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)立ち上がり、ホールをいっぱいに満たす。しかもスケールの大きなこのサウンドは、北国の透明で、きりっと冷たい空気の感じを、どこか想起させるのだ。 そんなアンスネスは40歳を超えた2012年から、ベートーヴェンという偉大なる山脈を踏破する長い旅に出ている。最初の成果はマーラー・チェンバー・オーケストラとのピアノ協奏曲第1番・第3番。すでにCDリリースされており、残り3曲も完成させたあかつきには全曲お披露目公演が日本でも予定されている(2015年12月)から、今から楽しみだ。 今回の来日は、その前哨戦ともいうべき位置づけになろう。プログラムはもちろんオール・ベートーヴェン。しかも初期(第11番)、中期(第23番「熱情」)、後期への入り口(第28番)という作風の変遷を網羅したソナタ群に、ベートーヴェンが好んだ変奏曲(創作主題による6つの変奏曲op.34)を加えている。この包括的な選曲はアンスネスのベートーヴェンに対するトータルな視点を、要約して伝えてくれることになるのだろう。その指先は、私たちの眼前にどんな楽聖の像を描き出してくれるのだろうか。文:江藤光紀ⒸOezguer Albayrak

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です