eぶらあぼ 2014.3月号
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No.26 新潟魚介三昧ハアーエー 烏賊場 漁師はエー心から 可愛い命帆にかけ ヨンヤア 波まくら新潟県民謡<両津甚句>より 久しぶりに新潟で演奏会を行った。会場は昨年オープンしたばかりの秋葉区文化会館。実はこちらで結成の運びとなったレジデンス合唱団の指導を継続的に行うこととなったため、その説明会も兼ねてプレ・コンサートが催されたのだ。当日はあいにくの雪であったが、さすがに慣れていらっしゃるのか、たくさんのお客様にご来場頂いた。 さて、説明会後その日のうちに帰京するため、新津駅から20分ほど電車に乗り、新潟駅に移動。新幹線は19:24発予定であり、夕飯を車内で済ませるか、出発前に済ませるか、微妙な時間帯ではあった。新潟駅到着時に時計を見るとまだ1時間半ほど余裕があったため、結局駅近くでささっと夕飯をしたためることにした。 ささっとしたためるとは言ったものの、新潟まで来て東京でも食べられるようなチェーン店の食事をする気など毛頭ない。やはり日本海の海の幸を頂いて帰りたいと思ったが、毎回寿司でも少々つまらない。ここはひとつ新規開拓を、と思い立ち、急いでリサーチすること3分。見つけましたよ、とっておき&おあつらえ向きの店を。そこは駅から歩いて5分ほどの場所にあるイタリアン、「タヴェルナ キアッキエリーノ」。不思議な形の建物に入って2階のテーブル席へ。壁にかかっているボードには、アンティパストからセコンドまで魚介のメニューがびっしりと書き込まれているではないか ! そう、ここは魚介料理を看板メニューにしている店なのだ。 アミューズに野菜のピクルスを頼み、フォッカッチャとカンパーニュ風のパンをかじっていると1品目のアンティパストであるノドグロ(!)のカルピオーネが運ばれてきた。カルピオーネはいわゆる南蛮漬けの代名詞であり、ルネサンスのレシピにも登場する由緒正しい魚料理だが、これをノドグロで食べさせるとは、さすが新潟。ただの地産地消ではないぞ、という心意気を感じるではないか。2品目はあん肝のパテ。通常のレヴァー・パテよりあっさり目の食感が好印象。3品目は白子のフリット、この日はフリットというより小麦粉をまぶし、フライパンで揚げ焼きにしてムニエルのように仕上げていた。そのネットリとした濃厚な味わいに喉が火照ってくるような錯覚すら覚える。プリモのパスタはカキとキャベツのスパゲッティ。キャベツのざっくりした歯ごたえとパスタに絡むカキ・エキスたっぷりのソース、カキへの火の通り具合も絶妙で、海の滋養を丸ごと摂取している喜びに身震いする。そしてメインとなるセコンドはホッケとジャガイモのサフラン煮込み。ホッケなぞ居酒屋でムシャムシャと食べるイメージしかなかったが、黄金色に輝くそれは、旨味を吸ったジャガイモと共に食すことで、むしろノーブルな逸品へと昇華していた。これから毎月合唱指導のために新潟を訪れることになるわけだが、楽しみがまたひとつ増えた。だが食がメインの出張とならないようにせねば。千葉大学卒業。同学大学院修了。東京芸術大学声楽科卒業。1999年よりイタリア国内外劇場でのオペラ、演奏会に出演。放送大学、学習院生涯学習センター講師。在日本フェッラーラ・ルネサンス文化大使。バル・ダンツァ文化協会創設会員。日本演奏連盟、二期会会員。「まいにちイタリア語」(NHK出版)、「教育音楽」(音楽之友社)に連載中。著作「イタリア貴族養成講座」(集英社)、CD「イタリア古典歌曲」(キングインターナショナル)「シレーヌたちのハーモニー」(Tactus)平成24年度(第63回)芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。187

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