eぶらあぼ 2014.3月号
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175 プロコフィエフの音楽を演奏する際に重要なのは、目まぐるしく変化する各楽想へのメリハリの利いたヴィヴィッドな反応=運動神経だと思うが、ここでの庄司はその意味で圧倒的な高みに到達している。それは第1番冒頭の濃密な歌い口と第2楽章スケルツォにおける猫の目のように変わっていく音色と表情付けの対比の絶妙さを聴けば明らかだろう。これほど“小股の切れ上がった”プロコフィエフはなかなかないのでは? そして第2番の中間楽章での抒情はこの上なく美しい。テミルカーノフ&サンクトペテルブルク・フィルのサポートは全く非の打ちどころなし。名盤。(藤原 聡)プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番・第2番/庄司紗矢香&テミルカーノフプロコフィエフ:◎ヴァイオリン協奏曲第1番 ◎同第2番庄司紗矢香(ヴァイオリン)ユーリ・テミルカーノフ(指揮)サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団 今年は、儚くも美しい美人画で知られる竹久夢二の生誕から130年。1千曲以上も出版された歌曲のシリーズ「セノオ楽譜」は、わが国の西洋音楽の普及に貢献したが、夢二は大正5年から昭和2年にかけて表紙絵を担当。物憂い歌曲の楽想も相まって、大正ロマンのイメージを形作った。当盤では「宵待草」など夢二の表紙絵による24曲に2曲を加え、初録音を含む全26曲を収録。実力派の歌手たちは、詞の言葉を一つひとつ丁寧に扱う一方、ピアノやヴァイオリンの共演陣もあえて古めかしい語法を選ぶなど、徹底して時代の空気感を再現。聴く者を大正ロマン期へと誘う。(笹田和人)夢二の歌〜セノオ楽譜表紙絵による歌曲集本居長世:◎春の宵 ◎別れし宵 多忠亮:◎宵待草 ◎花をたずねて 藤井清水:◎ふるさとの海 ◎子守歌 妹尾幸陽:◎草の夢 ◎露台 ◎かなしみ ◎小松耕輔:母 ◎中田喜直:風の子供 他石田祐華利(ソプラノ)松原典子(ソプラノ)関塚真希(メゾソプラノ)伊東大智(テノール) 他 金聖響が客演した東京佼成ウインドオーケストラの2012年&13年2月定期の演目から、前半のオリジナル曲をまとめた1枚。1970年代から2013年の新作まで、定番名曲を中心に日米の幅広い作品が集められている。藤倉大の委嘱作品のみ異質だが、この並びで聴くと、世界最前線の作曲家の発想の妙とクオリティの高さに気付かされ、吹奏楽にもこうした曲が必要であることを痛感させられる。演奏自体は、力まず丁寧な吹奏楽を身上とする金が、日本のトップ楽団の力量をフルに発揮させた、余裕十分にして生気漲る快演。中でも「オセロ」のドラマ性が光る。(柴田克彦)オセロ/吹奏楽のためのカプリス/金聖響&東京佼成ウインドオーケストラ◎シェルドン:ラプソディック・セレブレーション ◎リード:オセロ ◎藤倉大:“my butteries” for wind orchestra ◎保科洋:吹奏楽のためのカプリス ◎スミス:フェスティヴァル・ヴァリエーションズ ◎ティケリ:アメリカン・エレジー ◎リード:アルメニアン・ダンス パート1 他金聖響(指揮)東京佼成ウインドオーケストラ 宇宙のように奥行き深い音楽には、誰もが引き込まれるはず。パリに生まれ、日本とオーストリアに学んで、1960年代から第一線ピアニストとして活躍を続けて来た山本万里子。ベートーヴェン最後の3つのピアノ・ソナタで表現されるスケールの大きさは、これまでのステージ活動で培われた音楽的な蓄積を存分に感じさせるものだ。その熟達の一方、澄み切った音色からは、まるで若い奏者のようにスコアに対峙する、彼女の真摯な姿勢も聴いて取れる。その瑞々しさたるや、筆舌に尽くしがたい。演奏にとって、何が最も大切か。山本の音色が教えてくれるだろう。(笹田和人)ベートーヴェン最後の3つのソナタ/山本万里子ベートーヴェン:◎ピアノ・ソナタ第30番 ◎同第31番 ◎同第32番山本万里子(ピアノ)収録:2012年9月、サンクトペテルブルクユニバーサルミュージックUCCG-1647 ¥2800+税ベルタレコードYZBL-2503 ¥2381+税収録:2012年2月,2013年2月、東京文化会館,東京芸術劇場(ライヴ)日本コロムビア COCQ-85044 ¥2000+税収録:2013年1月、三鷹市芸術文化センターナミ・レコードWWCC-7744 ¥2500+税CDCDCDCD

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