eぶらあぼ 2014.2月号
67/211
64★2月8日(土)・文京シビックホール ●発売中問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522http://www.tpo.or.jp 三ツ橋敬子は、東京フィル100年の歴史の中で、定期演奏会を任された初の日本人女性指揮者である。毎回が真剣勝負といえども、在京オケの定期となれば重みが違う。彼女は2011年と12年の2回定期を指揮し、確かな成果を挙げた。また同時に東京フィルはいち早く彼女を認め、その音楽作りを最も深く知る楽団といえるだろう。三ツ橋は、今年2月、同楽団が文京シビックホールで行う《響きの森クラシック・シリーズ vol.47》に登場する。その繋がりから真価が最大限に発揮されるのは間違いない。 三ツ橋は、08年ペドロッティ国際指揮者コンクールで最年少&女性初の1位、10年トスカニーニ国際指揮者コンクールで女性初の2位を獲得した。以来、ヴェルディ響、スロヴァキア・フィル、都響、東響、日本フィル、新日本フィルほか多数の楽団に客演。ヴェネツィアに拠点を置く彼女ならではの俊才の3年の成果を記す、千一夜物語東京フィルハーモニー交響楽団響きの森クラシック・シリーズ vol.47カンタービレと生気溢れる、濃密で引き締まった音楽を聴かせてきた。今回はこうした約3年を経ての進化を、あらためて確認できる。 1曲目の「ローマの謝肉祭」序曲は前記の三ツ橋の特徴がフルに生きる作品。次のラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲は、左手のピアノ詩人・舘野泉の極めつけのソロが、言わずもがなの聴きものだし、三ツ橋にとっては12年の定期で舘野と同曲を共演した経験が強みとなる。そして後半の「シェエ舘野 泉ⒸA.Muto三ツ橋敬子ⒸKaoru Kitahara ウィスペルウェイのコンサートは、いつも刺激的だ。それは“今この瞬間に音楽が生まれ出る”感覚に充ちているからである。彼はプロフィールの通り「古楽器と現代楽器を最高水準で弾き分ける現代最高のチェリスト」「最もカリスマ性のあるソリスト」の一人であり、なめらかなテクニック、圧迫感のない軽やかな奏法、自在に舞うようなフレージングを特徴としている。そして楽器や時代の枠を超え、バッハもブリテンもライヴな音楽としてしなやかに提示し、楽曲の本質や新たな魅力を自然と浮き彫りにしていく。 今回彼は、「オール・ベートーヴェン・プログラム」によるリサイタルを行う。演目は、ソナタ第2・3・5番に「魔笛」の変奏曲2曲。初期、中期、後期(の入り口)のソナタが揃ったエッセンス的な選曲が成され、作風の変化と演奏の特徴を端的に知ることができる。 彼はベートーヴェンのチェロ作品全集を、1991年にピリオド楽器でパウ今生まれ出ずるベートーヴェンピーター・ウィスペルウェイ(チェロ)ル・コーメンのフォルテピアノと、2004年にはモダン楽器でデヤン・ラツィックのモダン・ピアノと共に録音している。自身後者の解説で「以前はメトロノーム指示を参考にしたが、今回はそれに従うまいと決意した」と語っており、演奏は自在の表現で爽やかさをも感じさせる。それから10年、今回のパートナーは「古楽器と現代楽器の両方を弾きこなすピアニスト」パオロ・ジャコメッティ。つまり前2作以上に自身と方向性が近い奏者である。さてそこでいかなるベートーヴェンが生まれるか?さらにまた前言に変化は? 常に“ライヴな”ウィスペルウェイだから、これはもう足を運ぶ以外にない。文:柴田克彦★3月12日(水)・紀尾井ホール ●発売中問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演(プログラムが異なります)3/14(金)・トッパンホール(03-5840-2222)ピーター・ウィスペルウェイⒸHang-Jin Choラザード」は、色彩感、オリエンタリズム、物語性の表現、中でも旋律の歌わせ方に注目したい。 もちろん純粋に名曲を楽しむもよし。毎回ほとんど完売のシリーズゆえ、チケットの確保はお早めに!文:柴田克彦
元のページ