eぶらあぼ 2014.2月号
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ぴっくあっぷ190 パリを拠点に室内楽や教育を中心に活躍する菅野潤。好評を博した2012年のメシアンに続く当盤には、ドビュッシーのピアノ音楽の集大成、前奏曲集を完全収録。この作品演奏に必要な、抑制された簡潔な表現と透明な色彩感を備えた、秀演を聴かせてくれる。第1巻は「沈める寺」で顕著なように、明晰で揺ぎない構成力で全12曲を構築。続く第2巻では、3段譜の導入によって前作よりもさらに複雑かつ研ぎ澄まされた響きを、丹念に悠々と織り上げていく。作品の様式感を適切に捉えたという意味で、過去の名盤を聴き比べる際の幹になるような模範的ディスクと言えるだろう。(渡辺謙太郎)ドビュッシー:前奏曲集第1巻&第2巻/菅野潤ドビュッシー:◎前奏曲集第1巻 ◎同第2巻菅野潤(ピアノ) チェンバロとバロック・ハープを駆り、アントネッロの個性的なサウンド創りの中核を担う一方、古楽の枠組みを超越した柔軟な活動も光る西山。今回はバッハが鍵盤楽器のために書いた三大組曲の録音第2弾として、イギリス組曲に挑んだ。愛用のフレンチ(タスカン)の個性は、舞曲を軸とした作品にマッチ。西山は楽器を意のままに引き回すようなことをせず、その豊潤な響きに身を委ねつつ、楽曲の端々で自らの内に秘めた熱い思いを吐露する。テンポ・ルバートやイネガル奏法も、実にしなやか。そして、特に長調楽曲と短調楽曲との切り替えの鮮烈さには、はっとさせられる。(寺西 肇)J.S.バッハ:「イギリス組曲」全曲/西山まりえ◎J.S.バッハ:「イギリス組曲」全曲西山まりえ(チェンバロ) 「アンサンブル de ヨコハマ」は国内外で活躍する演奏家で結成、オーケストラから室内楽まで多彩な編成を取り、四半世紀にわたって、横浜の地に名演を届けてきた。中でも、ミュンヘン・フィルで活躍し、同アンサンブルのコンマスを務める清岡正子を中心とした弦楽四重奏は10年以上もメンバー変更がなく、その緻密で深みある音楽創りで、活動の軸とも呼べる存在に。そんな4人の円熟の名人芸と室内楽の愉悦が、3つの佳品を通じて堪能できるライヴ録音。国際舞台で活躍する名手の底力も実感できるが、特にヴィオラの福本とも子が要所を押さえた“いい仕事”でキメている。(笹田和人)カルテットの技/アンサンブル de ヨコハマ◎ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」 ◎スメタナ:同第1番「わが生涯より」 ◎ショスタコーヴィチ:同第1番アンサンブル de ヨコハマ 清岡正子(ヴァイオリン) 小澤郁子(ヴァイオリン) 福本とも子(ヴィオラ) 間瀬利雄(チェロ) 2012年5月19日、83歳のデームスが東京文化会館で行ったリサイタルのライヴ録音。グルダ、バドゥラ=スコダとともに「ウィーン三羽烏」として名高く、精力的に来日公演を果たすデームス。深く温かく刻まれる音色、柔らかに揺れながらも安定感に包まれる拍感は、やはりこの人にしか出せない音楽だ。リサイタル当日、「冬の旅」の共演等で心を通わせた盟友フィッシャー=ディースカウの逝去が報じられた。追悼の意を込めたモーツァルトのロ短調のアダージョは穏やかな哀しみに彩られる。つぶやくように処理されるパッセージに、音楽家の人生の物語を想像せずにはいられない。(飯田有抄)イェルク・デームス ピアノリサイタル 2012.5.19◎J.S.バッハ:パルティータ第1番 ◎モーツァルト:クラヴィーアのためのアダージョ ロ短調 ◎ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番 ドビュッシー:◎沈める寺 ◎亜麻色の髪の乙女 ◎月の光 ◎フランク:アリア ◎ショパン:子守歌 他イェルク・デームス(ピアノ)収録:2013年4月、さいたま芸術劇場コジマ録音ALCD-7179 ¥2800+税収録:2009年9月、名古屋、電気文化会館ザ・コンサートホールOMF KCD-2042/3(2枚組) ¥3500+税収録:2006年3月,2007年7月、横浜みなとみらいホール(小)(ライヴ)ADEL ADLC-1307 ¥2857+税収録:2012年5月、東京文化会館(小)プロアルテムジケPAMP-1050 ¥2381+税CDCDCDCD
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