eぶらあぼ 2014.2月号
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ぴっくあっぷ188 日本を代表するギタリストとして活躍を続ける、荘村清志のデビュー45周年記念盤。冒頭に置かれたのは、映画『禁じられた遊び』のテーマとして知られる「愛のロマンス」。初心者でも手の届くシンプルな楽曲だからこそ、逆に荘村の音色が持つ滋味の深さが分かる。その後も「アルハンブラの想い出」をはじめ、スペインの佳品が並べられているが、弦を震わせる瞬間のみならず、残響までコントロールしていく巧みさとバランス感覚は、とにかく見事。常に変化し続けている名匠にとっては、その一瞬を切り取ったに過ぎない録音かもしれないが、紛れもない名演に仕上がっている。(寺西 肇)荘村清志デビュー45周年記念「アルハンブラの想い出」◎愛のロマンス〜映画『禁じられた遊び』より タルレガ:◎エンデチャとオレムス ◎アラビア風奇想曲 ◎プレリュード第2番・第5番 アルベニス:◎朱色の塔 ◎サンブラ・グラナディーナ ◎タルレガ:アルハンブラの想い出 他荘村清志(ギター) 韓国生まれの24歳ソヌ・イェゴンが、昨年開催された仙台国際音楽コンクールピアノ部門の頂点に輝いた際のライヴ録音。持ち前の明るい音が活かされたモーツァルトのピアノ協奏曲第21番は、自然発生的で生命力にあふれる。ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番では、優しく芯の強い表現力が冴え、楽曲のロマンティックな側面を存分に際立たせる。コンクールでは通常のステージと一味違った緊張感とともに、特別な演奏が生まれることも多い。この録音でも高い集中力がうまく作用して、パスカル・ヴェロ指揮の仙台フィルと、呼吸の合った堂々たる演奏を聴かせている。(高坂はる香)ソヌ・イェゴン〜第5回仙台国際音楽コンクール ピアノ部門優勝◎モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番 ◎ラフマニノフ:同第3番ソヌ・イェゴン(ピアノ)パスカル・ヴェロ(指揮)仙台フィルハーモニー管弦楽団 パリ音楽院で学び、2008年以降は東京佼成ウインドオーケストラで活躍するユーフォニアム奏者、岩黒綾乃のデビューCD。オリジナル曲とアレンジものが半々の構成は、彼女を知るに最適だ。演奏は、なめらかなテクニックや真綿のような音色美、そして何より細かい動きとカンタービレの自然さに感服させられる。中でもヴィヴァルディのファゴット協奏曲は秀逸。金管アレンジ特有の違和感がなく、バロック時代に同楽器の協奏曲が作られていたのかとさえ思わせる。フォーレやバッハの引き締まった歌い口も光り、オリジナル曲も同楽器の愛好家以外を魅了するに充分だ。(柴田克彦)ファンタジー・コンチェルタンテ/岩黒綾乃◎バラ:アンダンテとアレグロ ◎カステレード:ファンタジー・コンチェルタンテ ◎ヴィヴァルディ:協奏曲RV503 ◎ボッカラーリ:協奏的幻想曲 ◎ホロヴィッツ:ユーフォニアム協奏曲 ◎フォーレ:夢のあとに 他岩黒綾乃(ユーフォニアム)長崎麻里香(ピアノ) “愛にあふれる楽曲”ばかりが集められた小林有沙のデビュー録音。彼女が高校時代から想いを寄せ続けたというシューマンの「幻想曲」では、温かく柔和な音が、強い愛を繊細に描き出す。リスト編曲の「献呈」に続く流れは、まるでシューマンの心を代弁するかのようだ。一方のリスト「郷愁」「オーベルマンの谷」では、一音一音が丁寧に紡がれ、ミステリアスに香り立つ音楽を創る。ときおり挟まれるみずみずしく輝く音も魅力的。アルバムは「愛の夢」で閉じられ、一夜のリサイタルのような構成となっている。彼女の美点が作品と見事にマッチした、優しさに満ちた一枚。(高坂はる香)シューマン:幻想曲 他/小林有沙◎シューマン:幻想曲 ◎シューマン=リスト:献呈 リスト:◎郷愁(ル・マル・デュ・ペイ) ◎オーベルマンの谷 ◎愛の夢第3番小林有沙(ピアノ)収録:2013年10月、コピスみよしユニバーサルミュージックTYCE-84011 ¥2857+税収録:2013年6月、日立システムズホール仙台(ライヴ)フォンテック FOCD9613 ¥2400+税収録:2013年8月、ヨコスカ・ベイサイド・ポケットマイスター・ミュージックMM-2170 ¥2816+税収録:2013年8月、コピスみよしオクタヴィア・レコードOVCT-00102 ¥3000+税CDCDCDCD
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