eぶらあぼ 2014.1月号
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46レイ・チェン×石坂団十郎×江口玲★2014年6月24日(火)・よみうり大手町ホールレイ・チェン/石坂団十郎 with 読響★6月25日(水)・サントリーホール ●発売中問 読売新聞東京本社文化事業部03-3216-8500http://yomi.otemachi-hall.com 2014年春にオープンすることで話題の「よみうり大手町ホール」。501席の真新しく親密な空間に名器ストラディヴァリウスの優美で艶やかな音色が響き渡る。そんな贅沢な夕べが当公演だ。出演はレイ・チェン(ヴァイオリン)と石坂団十郎(チェロ)の若手実力派2人。12年にサントリーホールで行われた《ストラディヴァリウス・コンサート》で、この名器との抜群の相性を披露したことも記憶に新しい。また、彼らを支えるピアニストを、室内楽の名手で、両者と共演機会の多い江口玲が務めるのも心強い。 プログラムは3つの楽器の組み合わせをすべて楽しめる5曲構成。チェン&江口のサン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」、石坂&江口によるレスピーギ「アダージョと変奏」、チェン&石坂によるオネゲル「ソナチネ」&ヘンデル(ハルヴォルセン編)「パッサカリア」と続き、最後は3人が一堂に会したチャイコフスキー「偉大な芸術家の思い出に」の重厚な丁々発止の名器で名演を聴くストラディヴァリウスの響き レイ・チェン×石坂団十郎×江口玲やりとりで結ばれる。最大の聴きどころはやはり大曲のチャイコフスキーだが、チェンと石坂が瑞々しく掛け合うデュオ2曲にもぜひご注目を。生の演奏機会が少ないことに加え、この2人ならばこれらの作品の魅力を最良の形で聴かせてくれるはずだ。レイ・チェンⒸCHRIS DUNLOP石坂団十郎ⒸMarco Borggreve江口 玲ⒸRikimaru Hotta 東京文化会館の《プラチナ・シリーズ》第5回。シューベルトの誕生日(1/31)の公演は、「冬の旅」を、日本語訳詞と、原語ドイツ語(詩:ミュラー)の両方で聴かせるユニークな試み。もちろんどちらも全曲演奏だ。 日本語版は、作詞家・松本隆が1992年に訳したもの(この訳による演奏は、かつてCDも発売されていた。また松本は、「水車屋」も訳している)。太田裕美や松田聖子、あるいはKinKi Kidsなどをはじめ、1970年代から日本の歌謡界を代表する存在として2,000作以上の作詞を手がけてきた松本隆だが、もともとは日本語ロックの嚆矢ともいえる伝説のバンド「はっぴいえんど」のドラマー兼作詞担当だった人。当時チャレンジングだった「ロックを日本語で」という試みを成功させた開拓精神は、この日本語訳でも見事に生きている。古典詞の訳に、“格調高い”文語体ではなく、現代の口語訳を採用しているのが最大の特徴。音と言葉の違いが行き着く先河野克典(バリトン)&小林沙羅(ソプラノ) ミュラーと松本隆 2つの「冬の旅」して耳で聴いて意味のわかる言葉で歌われることで、音楽作品としての新しい生命が与えられた。 演奏は日本語版が小林沙羅、ドイツ語版が河野克典。「冬の旅」は青年が主人公なので、女声の、それもソプラノの演奏は聴く機会が少ない。しかも日本語で! 河野克典は、いうまでもなくこのジャンルの達人。 韻律や言葉の響きなども異なる2つの言葉で、どんなパラレルワールドが描かれるのか。あるいは逆に、言Music Weeks in TOKYO 2013プラチナ・シリーズ5★2014年1月31日(金)・東京文化会館(小) ●発売中問 東京文化会館チケットサービス  03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp小林沙羅Ⓒ岩切 等河野克典 なお関連企画として、チェンと石坂がそれぞれ読売日本交響楽団とチャイコフスキーの協奏曲を演奏する公演がサントリーホールで行われるので、そちらも楽しみだ。文:渡辺謙太郎葉の違いを超えた共通の世界が現れるのか。実に興味深い。文:宮本 明

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