eぶらあぼ 2014.1月号
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23ツの古都ライプツィヒの歴史と空気を感じることができるよう組まれていたとは、とても喜ばしいことだ。 待ち遠しい来日までは、彼らの録音を楽しむこともできる。幸運なことに、シャイーはゲヴァントハウス管と共に、積極的に数々のレコーディングにも取り組んでいる。10月にはヨーロッパで、ブラームスの全交響曲とオーケストラ作品を収録した『ブラームス・ボックス』(デッカ)を発表したばかり。まもなく日本でも『ブラームス:交響曲全集』としてリリースされる。「ブラームスの交響曲全集は、20年以上前に一度、コンセルトヘボウ管とも発表していますが、今回は随分と違った印象のものに仕上がったと思います。ぜひ日本の皆さまにも聴いていただきたいですね。ブラームスは、しばしばソリストとしてゲヴァントハウス管と共演していた、私たちの楽団に馴染みの深い演奏家でもあります。今シーズンは、ライプツィヒの定期演奏会でもツィクルスとしてブラームスの作品を取り上げる予定です」 そしてもうひとつ、私たちの好奇心をくすぐるのが、シャイーとゲヴァントハウス管が情熱を注いでいる《マーラー・プロジェクト》だ。マーラーの全交響曲を本拠ライプツィヒの演奏会で取り上げ、そのライヴ映像をDVD化していく、現在進行形の壮大なプロジェクトである。「マーラーは、楽団のみならず私自身にとっても重要な作曲家の一人です。DVDのリリースは数年がかりのプロジェクトですが、全集として残せることをとても嬉しく思っています。今シーズンのゲヴァントハウス管の開幕コンサートでは第9番の交響曲を演奏しましたが、これも近々、DVDとしてリリースされますよ」 全集の完成が今から待ち遠しい。このDVDプロジェクトの面白さは、最良の音楽を繰り返し“聴く”ことができるばかりでなく、シャイーのあふれんばかりの情熱と正確で美しい指揮が共存する様を“観る”ことができる点だろう。シャイーは、指揮者としての自分をどう見つめているのだろうか。「指揮者を目指したのは9歳の頃です。それまで作曲とピアノを習っていましたが、ローマでオーケストラの練習を聴き、その響きに心から感銘を受けたのがきっかけでした。この体験無しに、私のその後の人生は語れません。最初に指揮を教えてくださった先生からの影響もあり、私は明瞭で分かりやすい指揮を心がけています」 これまでの来日公演でも大きな反響を巻き起こしてきたシャイー&ゲヴァントハウス管に、今回も大いに期待できそうである。取材・文:小川 洋©Gewandhaus/Dirk Steiner
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