eぶらあぼ 2013.12月号
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81 エリック・ハイドシェックが、2年ぶりに来日する。コルトーに才能を見いだされ、その死の年まで指導を受け続けた彼は、往年の巨匠のピアニズムを今に伝える貴重な存在だ。エネルギーに満ち、人生を楽しんでいる…そんなオーラが音楽にそのままにじみ出ているこのピアニストも、今年で77歳を迎える。日本では喜寿と呼ばれる節目の年、彼が用意したのは実に詩的なプログラムだ。 冒頭、ヘンデルの前奏曲3曲とバッハの平均律から2つの前奏曲を交互に演奏。続けてハイドンのソナタ第スマートな感性は喜寿迎えても健在エリック・ハイドシェック (ピアノ)58番、モーツァルトのソナタ第4番から「アダージョ」、そしてベートーヴェンのソナタ第5番や「6つのバガテルop.126」を合わせる。ハイドシェックらしい趣向をこらした選曲だ。ドビュッシーでは、前奏曲集から四季をテーマとした曲を披露。スマートなハイドシェックの感性がきらりと光る。 温め続けたレパートリーを組み合わせ、自由な感性で構築したストーリー。その導きに身を任せ、フランスのエスプリがきいた世界を堪能する一夜となりそう。文:高坂はる香★11月29日(金)・東京文化会館(小) ●発売中問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jp 「箏」という楽器への先入観を、根底から覆す体験となるかもしれない。 古典はもとより、現代に生まれた作品も次々に紹介、美術家や詩人、ダンサーらともコラボレーションを展開するなど、先鋭的で国際的な演奏活動が煌めく西陽子。「日本の楽器は主張するよりも、あえて一歩引くことによって、聴く人を引き寄せる。つまり、聴き手の意識を呼び覚ますことができる。それが、日本の音楽の力」と主張する。新春に相応しく、古典の名曲である八橋検校「六段の調」で幕開けするステージ。しかし、現代音楽の開拓箏の音に寄り添って聴いてみたい西 陽子 (箏) 静岡音楽館AOI 新春ランチタイム・コンサート者・高橋悠治による「青森蛙」、彼女の師でもある沢井忠夫「鳥のように」、さらにリムスキー=コルサコフの作品からインスピレーションを得た自作「くまんばちの冒険」が披露されるに至っては、箏に広がる響きの世界の多彩さに、耳を奪われるに違いない。「箏の音は“木の声”。だから、人が楽器を支配するのではなく、人が楽器に寄り添う」と語る西。聴く者もまた、彼女の箏の音に寄り添ってみたい。文:寺西 肇★2014年1月15日(水)・静岡音楽館AOI ●発売中問 静岡音楽館AOI 054-251-2200 http://www.aoi.shizuoka-city.or.jp 標高1500メートルの豊かな自然の中で、世界的な一流演奏家が紡ぐ素晴らしい響きを、わずか250人の聴衆だけで味わう。八ヶ岳高原音楽堂は、1988年のオープン以来、そんな贅沢な時間を提供し続けてきた。今回は、日本音楽コンクール第1位をはじめ数々の賞に輝いてきた高木綾子(フルート)と、ベルリン・フィルをはじめ世界の一流楽団やアーティストと共演を重ねている吉野直子(ハープ)が登場。日本を代表する名手として、国際的な演奏活動を展開する2人のミューズの2人のミューズとの出逢い高木綾子&吉野直子 フルートとハープの夕べ 八ヶ岳高原サロンコンサート幸せな出逢いのステージだ。マスネ「タイスの瞑想曲」や、ドップラーとザマラの共作による「カジルダ幻想曲」など耳なじみのある名曲、8歳のモーツァルトが書いた「ソナタヘ長調」(K13)など少し珍しい作品、さらには武満徹の「海へ Ⅲ」など現代の佳品まで、多彩な響きの世界を紡いでいく。普段からクラシックを聴き込んでいるファンはもちろん、あまり馴染みのない人も存分に堪能できるコンサートになりそう。文:笹田和人★2014年1月25日(土)・八ヶ岳高原音楽堂 ●発売中問 八ヶ岳高原ロッジ0267-98-2131 http://www.yatsugatake.co.jp吉野直子 Photo:Akira Muto高木綾子
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