eぶらあぼ 2013.12月号
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64【CD】『OTOTABI-音旅-』日本コロムビア COCQ-85020 ¥2940 現代・純邦楽界屈指の逸材であり、2001年のデビュー以来、様々なコラボレーションで尺八の新たな可能性を切り拓いてきた藤原道山。チェロの古川展生、ピアノの妹尾武の3人からなる人気ユニット・KOBUDO-古武道-もそのひとつで、音から旅の風景が広がるような新作アルバム『OTOTABI-音旅-』も好調。今回も「道遙か」で作曲家としても魅せる。 「以前歩いたことのある熊野古道をイメージして書いた曲で、熊野詣に訪れた古(いにしえ)の人々の想いなどを描きました」 メンバーが持ち寄ったオリジナル曲に加えて、ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」を始め、ドビュッシーやリストの難解なピアノ曲、マリンバのSINSKEをゲストに迎えたハチャトゥリアンの舞曲なども聴きどころ。 「『アランフェス』の旋律が尺八の音色とすごくマッチして、この曲が日本人に愛されるのも肯けます。それ以外のクラシック曲はこれまでのツアーで共に旅をしながら演奏を重ね、3人でサウンドを築き上げたものばかり。マリンバが冴える息もつかせぬ展開の『レスギンカ』も昨年の浅草公会堂《納涼会》で行った演奏の再現で、尺八の限界に挑戦するような超絶曲ですが、なんとか振り落とされることなく他のみんなに必死でついて行きました」 3人にとっても想い出深い曲だという、山田耕筰の「赤とんぼ」には単なる日本人的感傷を超えた普遍性も。 「まだユニットとして活躍する前、兵庫県養父(やぶ)でのコンサートの日、窓から見えた赤とんぼの群れを思い出します。そしてこの日、3人で部屋飲みしている時にユニット結成の話が生まれたのです」 11月の全国ツアーを経て、12月27日には毎年恒例の《古武道忘年会》が今年は大阪の新歌舞伎座で開催される。 「毎年、東京まで聴きに来て下さる関西のファンの方には朗報ですね。こちらはアルバムのツアーとはまた違ったプログラムで、今年を振り返るようなコンサートになります。ゲストに、三味線プレイヤーの上妻宏光さんと、ソプラニスタの岡本知高さんを迎えます。劇場が上本町に移転してからは初めてなので今から楽しみにしています…3人とも飲むのも食べるのも大好きなのでそっちも(笑)」 来年1月には実に2005年以来となる古典アルバム『季(TOKI)〜春〜』のリリースと、1月9日には古典ライヴを三軒茶屋のシアタートラムにて開催。 「四季をテーマにした企画で、今回は春の名曲を集めた第1弾。人間国宝の山勢松韻先生(箏)や富山清琴先生(三弦)及びそのお弟子さんとの共演で、和の伝統を次の世代に伝えたいという想いも込めました。お楽しみに!」取材・文:東端哲也古武道忘年会 「師走の協奏曲」Vol.5★12月27日(金)・大阪/新歌舞伎座●発売中問 新歌舞伎座06-7730-22223人が旅を重ねて築いたサウンドです藤原道山 (尺八)インタビュー ピアニストの村田千佳が企画する《音+ピアノ・アンサンブルシリーズ》。室内楽奏者として世界のトップ奏者たちから篤い信頼を得る彼女が、ピアノ室内楽の無限に広がる魅力を伝えるべく、昨年12月にスタートした全4回のシリーズだ。クァルテットを迎えた第1回、ヴァイオリンとクラリネットを迎えた第2回に続き、第3回は、ウィーン・フィルのコンサートマスターでもあるヴァイオリニストのライナー・ホーネックと共に、オール・シューベルト・プログラムを届ける。今回のプログラムには「ソナチネ第1番」、「幻想曲D934」、「二重奏曲D574」といった作品が並ぶ。シューベルトの深い魅力に浸る村田千佳 音+ピアノ・アンサンブルシリーズ 第3回 両者によるシューベルトの共演は2011年にも東京で行われ、高い評価を得た。ウィーンっ子シューベルトの音楽性を体得しているホーネックに、村田のピアノが敏感に反応する。村田は東京芸大大学院修了後にウィーン国立音大大学院の室内楽科で学んでおり、そうした素地に豊富な室内楽経験が相まって、薫り高い自然な演奏が実現する。会場がトッパンホールという、緻密なアンサンブルの妙をすみずみまで聴くことができる空間であるのも嬉しい。文:高坂はる香★11月30日(土)・トッパンホール●発売中問 プロアルテムジケ03-3943-6677http://www.proarte.co.jp村田千佳

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