eぶらあぼ 2013.12月号
179/207
ぴっくあっぷ188 作曲家自選による女声合唱私家集。独唱曲でも異例の人気の彼女らしい魅力的な旋律と、合唱曲ならではの緻密な美しい仕掛けが次々と、実にナチュラルに現れる。聴きながらその世界にどっぷりと安住し、あらためて「合唱っていいな」と感じた。合唱指揮者・岸信介傘下の選抜メンバーによる特別編成合唱団は高水準。過度に尖ることのない、温もりある演奏は、幅広い層の女声合唱団の選曲の参考にもなりそうだ(全収録曲に出版譜あり)。その向きには特に、〈ローラ・ビーチ〉〈夢〉など、新たに女声編曲が起こされた初期の代表作が収められているのも貴重。(宮本 明)木下牧子女声合唱曲選〜悲しみのようにひそかに木下牧子:◎ローラ・ビーチ ◎夢 ◎むらさきの ◎夜の薔薇 ◎悲しみのようにひそかに ◎おんがく ◎ロマンチストの豚 他岸信介(指揮)小原孝(ピアノ)東京ウィメンズ・コーラル・ソサエティ 意表をつくアプローチで聴きなれた曲に新しい光を当てる、新奇なだけでなく筋が通っているため納得させられてしまう――上岡を聴く喜びはそんなところにある。ご自身の耳で確かめたい方、まずこの「第九」をどうぞ。テンポが早い。フレージングがすっきりとシンプル(第3楽章に顕著)、だからすいすい流れていく。でも古楽アプローチをモダン・オケに応用した類ともちょっと違う。キレがいいだけでなく、パンチもしっかりと効いている。なるほど、こういう方法もあったのか。第4楽章は破竹の勢い、オーケストラによるお囃子状態に歌手もついていくのが大変そうだが、聴けばスカッと元気になること必定。(江藤光紀)ベートーヴェン:交響曲第9番/上岡敏之&ヴッパータール響ベートーヴェン:◎交響曲第9番「合唱」上岡敏之(指揮)アンナ=カタリーナ・ベーンケ(ソプラノ)ステファニー・イラーニ(メゾソプラノ)ロベルト・キュンツリ(テノール)トーマス・ラスケ(バリトン)ヴッパータール交響楽団ヴッパータール・コンサート協会合唱団ヴッパータール歌劇場合唱団 2年前から宮谷理香がスタートさせているCDシリーズ《Rika Plays Fantaisie》。第3弾はシューベルトの即興曲を中心とする。宮谷というと可憐なショパンのイメージが強いが、このシリーズではベリオ、ベルク、武満、ドビュッシーらの作品を取り上げてきた。シューベルトは温かみある音色と重厚な和音でたっぷりと聴かせる。とりわけ「op.142-1」は自由にうつろう気分を、歌のレイヤーをいくつも重ねるように紡ぐ。リスト編曲の「ます」は、煌びやかなピアニズムと弦楽アンサンブルとを同時に耳にできるような豪華さで、心奪われる1枚だ。(飯田有抄)Impromptus「彩」〜Rika Plays FantaisieⅢ/宮谷理香シューベルト(リスト編):◎「きけきけひばり」によるセレナーデ シューベルト:◎即興曲op.90 ◎同op.142 シューベルト(リスト編):◎ます宮谷理香(ピアノ) ウィーン生まれのカリーンとドリスのアダム姉妹が、母国オーストリアの現代曲を入れたアルバム。中堅世代の代表的作曲家、リヒャルト・デュンザーによる前半3曲のうち、「ファンタジー、インテルメッツォとナハトムジーク」は2人のために書かれた力作で、厚手でシンフォニックに響く。中間楽章の末尾にはブラームスの音楽が一瞬顔を出す。アイネムの2曲はすっきりと明快で、特にop.11の「ソナタ」は短いながら愉しく、よくまとまった佳作。アダム姉妹はロマン派の録音を数多く行っているが、新しいテイストの1枚が加わった。伝統を踏まえながら明日を切り拓くウィーンの音楽シーンを彷彿とさせる。(江藤光紀)アイネム:ヴァイオリン・ソナタ 他/カリーン・アダム&ドリス・アダムリヒャルト・デュンザー:◎蒼き彼方より… ◎ヴァイオリンとピアノのための「ふたつの響き」 ◎ファンタジー、インテルメッツォとナハトムジーク アイネム:◎無伴奏ヴァイオリン・ソナタop.47 ◎ヴァイオリンとピアノのためのソナタop.11カリーン・アダム(ヴァイオリン)ドリス・アダム(ピアノ)収録:2013年4月、埼玉、富士見市民文化会館ナミ・レコードWWCC-7735 ¥2625収録:2012年9月23,24日(ライヴ)日本コロムビア COGQ-65 ¥2940Imagine Best CollectionIMGN-1106 ¥300011月22日(金)発売収録:2013年5月、オーストリア、ライディング、フランツ・リスト・コンサートホールカメラータ・トウキョウ CMCD-28291 ¥2940CDCDSACDCD
元のページ