eぶらあぼ 2013.11月号
66/209

63 ロンドンとボルドーの弦楽四重奏コンクールで優勝し、世界を舞台に躍進中のアトリウム弦楽四重奏団が、11月末に、チャイコフスキーとショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全曲演奏プログラムを携えて来日する。 「チャイコフスキーの音楽にはそれは深い感情と魂がこもっていて、我々アトリウム弦楽四重奏団の一部になりきっています」というメッセージを寄せていた楽団員に、フランスはアルザス地方、ヴィッセンプールで行われた国際音楽祭出演中に話を聞いた。 チャイコフスキーの全3曲についての彼らの言葉は重く、真摯だった。 「まるで3人の作曲家が書いたようにそれぞれが違います。第1番はロマン派の中で最もパワフルで、第2番は重くて忍耐強い。第3番は最も複雑です。いろいろな要素が組み合わさっているので、弦楽四重奏の中で最も難しいものの一つです」(アントン・イリューニン/第2ヴァイオリン) 「第2番や第3番を演奏した後、私の心や感情の中からすべてのパワーを奪い取ってしまうのでぐったり疲れます。これを一晩で演奏するのは大きなチャレンジ、だからこそとても楽しみですね」(アンナ・ゴレロヴァ/チェロ) さらに来日公演では、ショスタコーヴィチの全15曲を1日で連続演奏するマラソン公演(12/1・武蔵野市民文化会館、12/7・新潟/りゅーとぴあ)を含む。演奏する方も聴く方もさぞたいへんだろう。 「リハーサルで一番重要なのは実際に練習することよりも、我々個々のムードやフォームを調和させて本番のためのプロセスに入ることなのです。つまり一緒に過ごすことが大切なのです」(イリューニン) 「我々の方が観客の方よりも疲れないと思いますね。演奏しやすいのです。一気に続けるなら、一度だけその気持ちに入ればいいのだから」(ドミトリー・ピツルコ/ヴィオラ) 実際彼らの演奏は、作曲家の生涯を辿る暗い翳りの中にときおり煌めく光を放ち、苦しみと軽やかさの絶妙なバランスを保つものである。ところでロシア音楽は彼らにとってのライフワークなのだろうか? 「いいえ、違います。ベルリンにはドイツ系の音楽を勉強しに行ったのですから。今後はベートーヴェンのツィクルスを考えています。我々の人生の特定の時期に、重要だと考えるレパートリーを明確に表現したいだけです。2年後にはメンデルスゾーンも弾きたい。ドイツ人だからではなく、音楽の世界、弦楽四重奏の世界にとって重要だからです」(イリューニン)取材・文:秋島百合子★12月9日(月)・東京文化会館(小)●発売中問テレビマンユニオン03-6418-8617http://www.tvumd.comチャイコフスキー全曲は大きなチャレンジですねアトリウム弦楽四重奏団インタビューⒸGelucka Mergelidze 今年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(LFJ)で彼のギターを聴いた人は、「こんなに心を揺さぶる音楽を奏でるギタリストがいたのか!」と驚いたかもしれない。スペインの魂を歌い踊るフラメンコの世界では、いまや第一人者であるカニサレス。その深い音楽性ゆえにサイモン・ラトルとベルリン・フィルをはじめ、クラシックの音楽家とも多数共演している。これまでにない「アランフェス協奏曲」の弾き手であることは、LFJで証明された。 さて次は本領発揮のフラメンコで勝負だ。12月の来日公演では自身も所属するクァルテット(ギターとダン熱きスペインの魂を体感カニサレス(フラメンコ・ギター)サー)が独特の熱を帯びたステージを展開し、「これこそがカニサレス・ワールドだ!」と宣言してくれる。そのテクニックに目と耳を奪われ、リズムに煽られて心が高揚していくという体験は、彼らが超一流のパフォーマーだからこそ。フラメンコ初体験の方ならなおさら、4人のステージに圧倒されるだろう。観るなら「今!」なのだ。文:オヤマダアツシ★12月18日(水)、19日(木)・新宿文化センター ●発売中問 プランクトン03-3498-2881http://www.plankton.co.jpⒸAmancio Guillén

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です