eぶらあぼ 2013.11月号
60/209
57ⒸMassimo Volta ユーフォニアムの第一人者・外囿祥一郎と読売日響のテューバ奏者・次田心平が、新ユニット「ワーヘリ」を結成。CD『スマイル』をリリースし、コンサートも行う。 「今年3月に兵庫で2人のワンコイン・コンサートをやったら大ホールが満席になった。そこで色々な可能性があるな…と話が進み、この夏の録音に至りました」(外囿) 「両楽器のデュオにピアノを加えた形は、おそらく日本初。新たなチャレンジです」(次田) 名称は、編曲とピアノで参加したジャズ界の巨匠・前田憲男が、 「『世界遺産=ワールド・ヘリテージ』略して『ワーヘリ』でいいんじゃない」と提案して決まった。 CDには、多彩な12曲が収録されている。 「金井信さんのオリジナル『ヒマラヤの四季』の『春』で始まり、CMでも使われたアンドレ・ギャニオン『めぐり逢い』に続きます。『ジャズイディオムによる2章』は天野正道さんの書き下ろし。チャップリン『スマイル』から、金井信さんの曲、加羽沢美濃さんの2曲に、カッチーニ『アヴェ・マリア』と美しい作品が続き、デュオの曲に前田先生がピアノを加えたホレス・シルヴァー『ザ・プリーチャー』、ピアソラのオーボエ曲『アヴェ・マリア』に至ります」(2人) これらはすべて新作&新編曲。さらにもう1曲、中橋愛生の「アロハ・オエ・ディエス・イレ」がある。 「去年の夏、2人が出るリンツのカンファレンス用に『ディエス・イレ(怒りの日)』の変奏曲を頼んだら、中橋さんが『語呂が一緒なのでアロハ・オエも付けときました』と(笑)」(外囿) 「遊び心のある」(次田)同曲は技巧的な動きも鮮やかだが、全体を通すと、「“癒し”がテーマ」(次田)と言う通り、心地よいサウンドに浸れる。しかも楽器が区別できない瞬間があるほど、絡み具合がまろやかだ。 「両楽器が上下逆転する場面もあるし、いつもはベース・ラインを受け持つテューバがかなりハーモニーを吹くのが妙味です」(外囿) 2人は「両楽器の関係者以外の人にもぜひ聴いて欲しい」と口を揃える。 「吹奏楽人口は膨大ですが、特に学生はコンクール用の曲ばかりを聴いてしまう傾向があります。彼らに本物を提供し、音楽を聴く楽しみを知って欲しい。そしてさらに広がって、例えば主婦の方が料理を作る時のBGMに聴いてくれれば嬉しい」(外囿)。 なお「楽譜も出版される予定」ゆえ、演奏面でも楽しめる。 コンサートは、12月に岡山と東京にて開催。「両楽器の倍音は凄い。ホールでは、2本とは思えないほど、包み込むようなハーモニーになる」(外囿)ので、ぜひとも体感したい。 ちなみに外囿は今年、25年務めた航空自衛隊を離れて、ソロ、室内楽、講師などで活躍中。11月に行う初の全国ツアー・リサイタルも併せてご注目を。文:柴田克彦★12月22日(日)・岡山/就実なでしこホール(長谷川楽器086-225-2858)、25日(水)・東京文化会館(小)(テンポプリモ03-5810-7772) ●発売中※外囿祥一郎の公演情報は下記ウェブサイトをご参照ください。http://www.sol.dti.ne.jp/hokazono“世界遺産”級のデュオ、日本初登場!ワーヘリ〈外ほか囿ぞの祥一郎(ユーフォニアム)&次つぎ田た心平(テューバ)〉インタビュー イタリアを拠点とし、ソロ、室内楽に加えバレエとの共演など、多彩な演奏活動を行う吉川隆弘。東京芸術大学大学院修了後ミラノに留学し、コルトーやミケランジェリの高弟だったアニタ・ポリーニのもとで研鑽を積んだピアニストだ。 今回リサイタルで取り上げるのは、ハイドンのソナタト短調、シューマンの幻想曲、ヤナーチェクの「霧の中で」、ラヴェルの「優雅で感傷的なワルツ」「ラ・ヴァルス」と多岐にわたる。一夜にしてさまざまな時代の作品を弾く、ピアニストに多くのことが求められるプログラムだ。 吉川のピアノの魅力は、明瞭なタッチ、イタリアで培ったセンスを聴かせる吉川隆弘(ピアノ)丁寧に噛みしめるように紡がれる美音にある。確固たる基礎の上に、イタリア生活で培われた豊かな感性が加わったためだろう。その表現には真面目さの中に遊び心が見え隠れする。優れたセンスで、2世紀にわたる年月の中で生まれた作品たちの多様なスタイルを、注意深く描き分ける。誠実な演奏で、私たちの期待に充分応えてくれそうだ。文:高坂はる香★11月27日(水)・サントリーホールブルーローズ(小)(Ampio東京支部03-6421-8131)、12月4日(水)・兵庫県立芸術文化センター(小)(Ampio 0798-73-3295) ●発売中【CD】『スマイル』ユニバーサルミュージックTYCE-85002 ¥300010月30日(水)発売左:外囿祥一郎 右:次田心平ⒸMasashige Ogata/Universal Music
元のページ