eぶらあぼ 2013.11月号
52/209

49 これこそまさに新機軸だ。壁一面に映し出される映像と共に、オーケストラが豪奢な音楽を奏でる。それもままある映像付きコンサートではない。映像はプロジェクションマッピングという注目の手法、会場はサントリーホール、演目はチャイコフスキーの三大バレエ、演奏は西本智実指揮する日本フィル…と揃えば、すべての面で鮮烈なステージを予感させる。 同公演は、日本フィルがミュージック・パートナーの西本智実と共に始める新プロジェクト、ミュージック・パートナー・シリーズ(MPS)だ。視覚と聴覚の不思議な調和や相乗効果に注目してきた指揮者・西本が、その感性を活かして行う、映像付きコンサート・シリーズである。要を担うアートディレクターは田村吾郎。彼は、東京・春・音楽祭などで頭角を現し、「音楽は五感に作用する力を持つ」との考えから独自の視覚芸術を展開している。肝となる「プロジェクションマッピング」とは、建造物と映像を融合してエンターテインメントを創造する手法。昨年のこれはまだ誰も体験していない西本智実×日本フィルハーモニー交響楽団 ミュージック・パートナー・シリーズ東京駅赤レンガ駅舎オープニングイベントが好例だ。 演目は、「くるみ割り人形」「白鳥の湖」「眠れる森の美女」の順で1回1演目が上演される(抜粋版)。西本は外来オペラを再三指揮し、プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」で新方式の踊り付き演奏を行うなど、視覚とのコラボに実績があるし、日本フィルとは「くるみ割り人形」全曲のCDを録音してもいる。日本フィルは今年9月の《ワルキューレ》第1幕で出色の劇場音楽を聴かせており、その顕著な充実ぶりと相まって、演奏面での期待も高い。 この新芸術体験を得られるのは会場でのみ。それゆえまずは足を運ぼう!文:柴田克彦Vol.1 11月24日(日)・くるみ割り人形 Vol.2 2014年1月18日(土)・白鳥の湖Vol.3 2014年4月12日(土)・眠れる森の美女 会場:サントリーホール ●発売中問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911MPS特設ウェブサイト http://mps.japanphil.or.jp西本智実Ⓒ大木大輔プロジェクションマッピング(※テスト照射/実際の映像とは異なります) 「調理場のレビュー」と題された、都響メンバーによる室内楽トークコンサートが開催される。日頃オーケストラで聴く都響の名手たちに、ピアノの三舩優子が加わって、愉悦に満ちた室内楽とトークのひとときを過ごせるだろう。 「調理場のレビュー」とはマルティヌーの同名の組曲のこと。クラリネット、ファゴット、トランペット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノというユニークな編成で、キッチン用品たちがバレエを繰り広げるというユーモラスな作品だ。 マルティヌー作品以外の選曲もバ多彩なアンサンブルの愉悦都響メンバーによる室内楽トークコンサート Vol.17ラエティに富んでいる。モーツァルトのクラリネット五重奏曲は作曲者晩年の大傑作。クラリネット(糸井裕美子)のふくよかな響きを堪能したい。モーツァルトと同時代人で管楽器のための作品を多数残したドゥヴィエンヌの作品からは、ファゴット四重奏曲第3番ト短調を。独奏楽器としてのファゴット(向後崇雄)の魅力を再発見できそう。作風としてはモーツァルトに近い。 サン=サーンスの七重奏曲が聴けるのも嬉しい。トランペット、ピアノ、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという独特の編成を持つ。華やかで軽快なトランペット(高橋敦)が、サン=サーンスの軽妙洒脱さをいっそう際立たせる。 多彩な編成の作品を同時に味わえるのもオーケストラのメンバーによる室内楽だからこそ。もうひとつの都響がここに。文:飯尾洋一★12月8日(日)・東京文化会館(小) ●発売中問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp糸井裕美子Ⓒ山形 悟向後崇雄Ⓒ堀田力丸高橋 敦Ⓒ堀田力丸三舩優子Ⓒ武藤 章

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です