eぶらあぼ 2013.11月号
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36 《フィガロの結婚》のテーマはいつの世にも変わらぬもの。つまりは「横暴な上司に“倍返しする”部下」である。だから、どんな上演スタイルでも愛される人気作。今回はバロック演奏の第一人者、寺神戸亮が「18世紀の音」でこのオペラを追究する。 「モーツァルト後期のオペラは比類なき傑作ぞろいですが、特に《フィガロの結婚》は息もつかせぬどんでん返しの連続で飽きさせず、作曲家の鋭い人間観察と描写に心打たれます。笑いや風刺の中にもモーツァルトが貫き通した人間愛に感動させられます」 この名作を「18世紀の音」で楽しむ醍醐味とは? 「演奏において楽器は道具にすぎませんが、音楽に合った道具を使えばよりその本質に近づきやすくなると実感しています。モーツァルト時代の楽器は現代のものに比べて倍音が多く、合奏になるとより透明感が出ます。そのため、楽器同士が溶け合って新しい音色を生み出し、歌声ともよく混じりあいバランスも取りやすいのです。ピッチはA=430Hzです」 モダン楽器での『ピリオド風』演奏も広まっているが、それとの違いはどこに? 「確かにモダン楽器でのノンヴィブラートの演奏も抵抗なくこなせるようになってきましたが、やはりガット弦にはガット弦の音があり、ベーム式フルートとトラヴェルソ・フルート、ナチュラルホルンとバルブホルンの音色の違いも歴然です。時代の演奏習慣や背景も考慮した上で演奏内容について深く語るなら、『ピリオド風』という言葉では言い尽くせないものがあります」 11月の公演はキャスティングの妙も注目の的。 「アルマヴィーヴァ伯爵は『北とぴあ国際音楽祭』ではお馴染みのフルヴィオ・ベッティーニさん。圧倒的な歌唱力とエスプリの効いた演技が武器です。伯爵夫人にはスウェーデンの歌姫クララ・エクさん。透明感のある美声の持ち主です。題名役の萩原潤さんは誠実な歌唱で光る人。これまで伯爵が持ち役で今回が初のフィガロ役だそうです。スザンナにはロベルタ・マメリさん。伸びやかで明るい歌声とチャーミングな演技が役にぴったりだと思います。ケルビーノは波多野睦美さんです。一見、意外に思えるかもしれませんが、あの名アリア〈恋とはどんなものかしら〉で少年の色気を巧みに表現できるのは彼女以外に考えられません。今までにない歌を聴かせてくれるでしょう。抜群のチームワークで最高の《フィガロ》を創り上げます!」取材・文:岸 純信(オペラ研究家)北とぴあ国際音楽祭 2013歌劇《フィガロの結婚》セミ・ステージ形式★11月22日(金)、24日(日)・北とぴあ ●発売中問北区文化振興財団 03-5390-1221http://www.kitabunka.or.jp名作オペラを当時のサウンドで愉しむ寺神戸 亮 (指揮)インタビュー 来年デビュー30周年を迎えるサックスの巨匠・須川展也。その“プレ”企画として行われる今回の《サックス祭!》だが、早くもプレ段階から前代未聞の豪華さなのが彼らしい。 前半は小柳美奈子(ピアノ)との夫婦デュオ。ジャズとクラシックが融合した名曲、本多俊之「風のコンチェルト」(新編曲)で幕を開け、フランクのヴァイオリン・ソナタ(サックス版)が続く。フランス系ヴァイオリン・ソナタの最高傑作が、あたかもサックスのために書かれたような洗練と充実を聴かせてくれることだろう。 そして後半は、須川の教え子が約サックス50本が奏でる豪華絢爛な響き須川展也 サックス祭!50人も集ったサックスバンドの大饗宴。緻密な音の綾から分厚くゴージャスな輝きまで、サックスの魅力を余すところなく伝える。演目は、ララ「グラナダ」、エレビー「シナモン・コンチェルト」などを予定。また、長生淳「パガニーニ・ロスト」やワーグナー「エルザの大聖堂への行進」では須川が指揮も披露するというから、何とも楽しい“祭”になりそうだ。文:渡辺謙太郎★11月2日(土)・紀尾井ホール●発売中問 コンサートイマジン03-3235-3777http://www.concert.co.jp須川展也ⒸMasanori Doi寺神戸 亮
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