eぶらあぼ 2013.11月号
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35 「音楽への愛、仲間への敬意です」驚くほどシンプルかつ奥の深い答えだ。今年結成45年を迎えるパノハ弦楽四重奏団に、グループを長く続けるための秘訣を尋ねた時のこと。 世にプロの弦楽四重奏団は数々あれど、全員が(例えばソロやオーケストラ活動の傍らでアンサンブルを組むのではなく)四重奏団としての活動にすべてを捧げ、かつ長年にわたって同じ演奏者が在籍し続けている有名なグループといえば、パノハ四重奏団くらいだといってよい。何しろ一番“新しい”メンバーがヴィオラのミロスラフ・セフノウトカであり、彼がこのグループに加わったのがすでに40年以上前の1971年だというのだから。 それにしてもパノハ弦楽四重奏団のメンバーは、ソロやオーケストラで活動をおこなうつもりはなかったのだろうか? 「私たちは学生時代、プラハ音楽院、あるいは同音楽院に関係する教授に師事していました。そうした環境の中で、弦楽四重奏曲こそが弦楽器奏者にとってのアンサンブルの礎であることを学び、途方もないレパートリーの存在するこの世界に魅了されていったのです。まあきっかけとしては、ある日教授に呼び出されて、『君は弦楽四重奏をしなさい』と命じられたという事情もありますけれどね(笑)」 パノハ弦楽四重奏団がチェコを代表するアンサンブルとして世界的な活躍を展開しているのは周知の事実だが、特にチェコ出身の作曲家については他の追随を許さないとの定評がある。だが今回の日本ツアーでは、ドヴォルザークの「アメリカ」などの“定番”を押さえながら、いっぽうでハイドンやモーツァルトの作品も積極的に取り上げられる予定なのだ。なぜか? 「弦楽四重奏の基本は、やはりウィーンの古典派にあります。今回、ハイドンの『狩』やモーツァルトのクラリネット五重奏曲(共演:橋本杏奈)などを取り上げますが、私たちも学生時代に弦楽四重奏団として活動をおこなうにあたって、まずハイドンから始めました。またそれを礎にすることで、スメタナでもドヴォルザークでもより充実した演奏が可能となるのです」 パノハ弦楽四重奏のメンバーいわく、自分たちは「同僚であると同時に兄弟のような存在」だとのこと。だからこそ、音楽を通じて互いに理解し合い、音楽に立ち返って議論しあえるのだとも…。室内楽、とりわけ弦楽四重奏については「音楽による対話」という表現が用いられることが多いが、言うは易く行うは難いこの作業をパノハ弦楽四重奏団は45年の長きにわたって地道に積み上げてきた。長い熟成の時を経て、音の職人たちが紡ぎ出す演奏はますます深化を遂げ、今回も聴き手の心に染み入ることだろう。取材・文:小宮正安★11月8日(金)・浜離宮朝日ホール、9日(土)・フィリアホール、10日(日)・福岡/クララザール ●発売中問カメラータ・トウキョウ03-5790-5560http://www.camerata.co.jp“音の職人”たちの紡ぐアンサンブルパノハ弦楽四重奏団インタビュー 11月の東京オペラシティの人気企画「B→C」に登場するのは、新進クラリネット奏者の田中香織。2009年の日本音楽コンクール覇者で、現在はスイスのバーゼルと日本を拠点に活躍中だ。J.S.バッハ作品にクラリネットのオリジナル曲がなかったこともあり、今回初めてバッハ作品に取り組むという彼女。披露するのは、音域や調性の相性を考えて選んだソナタ変ホ長調(原曲:フルート・ソナタBWV1031)。これに続くのが、「古典と現代のコントラスト」をテーマにした多彩で濃密な5曲。ドビュッシーの第1狂詩曲やブラームスのソナタ第2番といったクラリネットの傑作、自身がクラリネット奏者でもある聴き手を未聴の地平に誘う東京オペラシティBビー→トゥーCシー 田中香織(クラリネット)ヴィトマンのユーモア溢れる小品など、どれも楽しみだ。だが、何と言っても注目なのが、ヒルボリの協奏曲と、ブーレーズ「二重の影の対話」の2曲。本格的なコレオグラフィー(振付)付きの前者は、彼女が近年追及する“見せる音楽”を。後者は、会場に複数設置されたスピーカーから流れる“エレクトロニクスとの融合”で、それぞれ聴き手を未聴の地平に誘う。尚、今回は田中の地元、北九州でも同一公演がある。文:渡辺謙太郎★11月2日(土)・北九州市立響ホール(北九州市芸術文化振興財団093-562-3611)、5日(火)・東京オペラシティ リサイタルホール(東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999) ●発売中 http://www.operacity.jp
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