eぶらあぼ 2013.11月号
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34 「わしをどれほど愛しているか言ってみろ」…3人の娘に王国を委譲することにしたブリテン王・リアは、自分の発した愚かな問いが原因で国を追われ、荒野をさまよい絶望の果てに狂死する。原作はシェイクスピアの悲劇『リア王』。ヴェルディも果たせなかったそのオペラ化を実現したのが、日生劇場開場50周年記念「特別公演」で日本初演されるアリベルト・ライマン作曲《リア》だ。1978年ミュンヘンにてフィッシャー=ディースカウ主演で世界初演され、今日に至るまで再演の絶えない名作である。 5幕からなる原作の物語は2部11場に集約され、リアが破滅するプロセスがシュプレヒゲザング(言葉の抑揚を活かした朗唱)と巨大な管弦楽を駆使して描かれる。娘たちへの問いに始まる冒頭から息もつかせぬ展開で、荒野で叫ぶリアの狂気、コーディリアの死体を抱いて現れたリア最期のモノローグなど見どころが多く、咆哮する金管楽器と多彩な打楽器による激烈シェイクスピアの原作を鮮烈なサウンドで表現日生劇場 アリベルト・ライマン《リア》な音楽も迫力満点。12音とトーン・クラスター(音塊)を用いた5つの幕間音楽も聴きどころで、管弦楽ファンにもお薦めだ。11月の日本初演は栗山民也の演出、昨年《メデア》を成功に導いた下野竜也の指揮と読売日本交響楽団のコンビで行われる。歌手は東京二期会が総力を結集してのダブルキャストで、リア役は小森輝彦(11/8,11/10)と小鉄和広(11/9)が演じる。現代作品は難しいとの先入観を捨てて観劇すれば、深い感銘を受けることだろう。お見逃しなく!文:水谷章良★11月8日(金)、9日(土)、10日(日)・日生劇場 ●発売中問 日生劇場03-3503-3111http://www.nissaytheatre.or.jp メッツマッハーとハーディングというヨーロッパを湧かせる気鋭の2人による指揮者体制となった新日本フィルハーモニー交響楽団。これからの音楽的な充実に期待が高まっている。そんな中、ハーディングが再びマーラーを取り上げる。今年はすでに第6番を指揮したが、今回は第7番。いわゆる「夜の歌」のサブタイトルで知られる交響曲である。 1905年に完成した第7番は全5楽章だが、その第2、第4楽章にマーラーは「夜曲」というサブタイトルを付けた。ギター、マンドリン、そしてテノール・ホルンというオーケストラではあまり使われない珍しい楽器が編成に加わっているのもユニークな点である。第5番〜第7番は声楽の入らない、器楽による交響曲なのだが、その中で第7番は、最も複雑で、繊細な作品ともいえるだろう。 ハーディングは若い頃からマーラーの交響曲に親しんできた。アバドにマーラーの心の中にある“夜”の情景を描き出すダニエル・ハーディング (指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団認められて、マーラー・チェンバー・オーケストラを中心に活躍し、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団でのデビューもマーラーの交響曲(第10番)を指揮している。マーラー作品への理解、解釈の深さでは同時代の指揮者の中では一歩抜きん出ていると思う。新日本フィルともマーラーの交響曲の演奏会を積み上げて来た。この第7番でも両者の息のあった演奏が期待できる。マーラーの楽譜の奥に入り込み、その心の中にある“夜”の情景を描き出す。作品の真実に触れようとするハーディングの指揮に注目だ。文:片桐卓也第517回定期演奏会 トリフォニー・シリーズ★11月8日(金)、9日(土)・すみだトリフォニーホール●発売中問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815http://www.njp.or.jpダニエル・ハーディングⒸHarald Hoffmann/DGマークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます)下野竜也栗山民也小森輝彦小鉄和広新日本フィルハーモニー交響楽団

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