eぶらあぼ 2013.11月号 33/209

eぶらあぼ 2013.11月号
33/209

30TipTop 充実の演目とキャストで、今やイタリアを代表する歌劇場に数えられるトリノ王立歌劇場。2010年の初来日では、ヴェルディの《椿姫》にプッチーニの《ラ・ボエーム》とイタリア・オペラ2大作曲家の2大名作に最高のスターを揃え、心を揺さぶる名演を堪能させてくれた。今回の来日でも、2大作曲家の名作という王道路線は変わらない。トリノ王立歌劇場は、傑作を最高のキャストで聴きたいというオペラファンの願望を知り尽くしている。 今回の演目は、生誕200年のヴェルディ《仮面舞踏会》とプッチーニ《トスカ》。《仮面舞踏会》は完成度の高い作品であるにもかかわらず日本では上演の機会が多いとは言えないので、今回の来日はビッグチャンスだ。物語の軸は、総督のリッカルドと、部下で親友でもあるレナートの妻、アメーリアの秘めた恋だが、加えて友情や政治などがからむスケールの大きさが魅力。バリトンが主役をつとめることが多いヴェルディ・オペラで、テノールが主役を歌う貴重な作品でもある。恋人たちが愛を告白しあう第2幕の二重唱は、ヴェルディが書いた「愛の二重唱」の最高峰。フィナーレを飾る舞踏会の場面など、オペラとしての見せ場にも事欠かない。また、市原愛がズボン役であるオスカルに挑戦するのも大きな話題となるだろう。 20世紀前半のシカゴに設定された、おしゃれで洗練されたマリアーニ演出の舞台に集うのは、役柄にふさわしいスターたち。リリックな美声と群を抜く様式感でリッカルド役のひとつの理想を体現するラモン・ヴァルガス、深みのある声に加え、スケール感と表現力に恵まれたリリコ・スピントの新星オクサナ・ディカ、イタリア的な柔らかなバリトンが魅力のガブリエーレ・ヴィヴィアーニ、ヴェルディ・メッゾの主要な役で世界を席巻するマリアンネ・コルネッティと、さすがトリノ!と唸りたくなる名手ぞろいだ。 もうひとつの演目である《トスカ》は、イタリア・オペラを代表する人気作。手に汗握るストーリーを、プッチーニお得意のとろけるようなアリアと美しくも精妙なオーケストラがサポートし、初心者からオペラ通まで幅広いファンを魅了する。1800年のローマというリアリティある設定も、歴史ドラマ好きにはたまらない。 今回の《トスカ》の注目は、やはり三拍子揃ったキャストだろう。タイトルロールには、トスカ役で世界最高と評される2人のプリマ、ノルマ・ファンティーニにパトリシア・ラセット。濃密な美声と女優並みの演技力で「プッチーニ歌い」の名声をほしいままにするラセットは、日本初登場だ。相手役のカヴァラドッシには、明るく甘く華のある声でイタリア・オペラの主要な役を総なめにしているマルセロ・アルバレス。敵役のスカルピアは、役にぴったりの性格的な美声の持ち主ラド・アタネッリと、まさに理想的。ジャン・ルイ・グリンダの演出はシンプルかつ伝統的で、《トスカ》の世界に思い切り浸れる。 精鋭揃いの歌手を統率するのは、歌劇場音楽監督のジャナンドレア・ノセダ。トリノを黄金時代に導いた立役者だ。火を噴くような情熱と抜群の劇的感覚を自在に操りながら歌手の歌心を引き出す指揮は、まるで魔法のよう。この春もトリノで聴くことができたが、音の中身も充実し、オペラ指揮者としての自信に満ちてきたことがうかがわれた。彼のオペラなら聴いてみたい。ノセダは今、心からそう思える数少ない指揮者のひとりになったのだ。この来日公演を聴き逃す手はないだろう。文:加藤浩子トリノ王立歌劇場 来日公演絶好調の劇場が満を持して送る2大名作!《仮面舞踏会》《トスカ》への期待トリノ王立歌劇場 問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 ローソンチケット0570-000-407 テレビ東京チケット事務局03-3435-7000「仮面舞踏会」より ⒸTeatro Regio Torino「トスカ」より ⒸTeatro Regio Torino

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