eぶらあぼ 2013.11月号
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ぴっくあっぷ180 スクロヴァチェフスキは録音時88歳。過去の80歳以上の指揮者には「緩みも芸のうち」という人も少なくなかったし、体感時間がゆっくりするなど老匠であることを感じさせるサインがどこかにはあった。しかしブラインドで本ディスクを聴いたら、かような歳の指揮者が振っていると想像できないのではないか。ここではすべてがリズミカルで歯切れ良く進み、そのリードにも弛緩したところがない。むしろ所々で弦にジューシーな味わいがあり、硬質な音作りにも柔軟さが加わって、理と情がバランスのいいところに落ち着いている。こんなことは類例がない。まだ当面は元気なスクロヴァを聴けそうだ。(江藤光紀)ベートーヴェン:交響曲第3番〜第5番/スクロヴァチェフスキ&読響ベートーヴェン:◎交響曲第3番「英雄」 ◎同第4番 ◎同第5番「運命」 ◎「レオノーレ」序曲第3番スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)読売日本交響楽団 日本が世界に誇る名手の最新録音はフルート1本で紡ぎ出す音の万華鏡。選曲がまた巧みで、官能的なピアソラがふとみせる内向きな「タンゴ・エチュード」第4番に始まり、ドビュッシーの個性と神話的世界を卓越した技巧の元に凝縮した傑作「シランクス」まで、多彩な想い出を胸に故郷に戻った一人旅を回想するように聴かせる。道中には“悪魔的な”「カプリース」第24番を始め、メルカダンテによるおどけたドン・ジョヴァンニや神秘的なリヴィエの「やさしい鳥」など様々な出会いが待ち受けるが、伸びやかで屈託のない名人芸で渡り合う姿は飄々として思慮深く、実に優雅。(東端哲也)シャコンヌ〜フルート無伴奏作品集/工藤重典◎ピアソラ:タンゴ・エチュード第4番・第3番 ◎パガニーニ:カプリース第24番 ◎メルカダンテ:《ドン・ジョヴァンニ》の「お手をどうぞ」による変奏曲 ◎リヴィエ:やさしい鳥 ◎イベール:独奏フルートのための小品 ◎ドビュッシー:シランクス 他工藤重典(フルート) 冒頭のバリオス「大聖堂」から、早くもその太く温かい音色に魅了される。内外のコンクールで数々の入賞歴を誇るギタリストで、現在は後進の指導も行う河野智美の最新盤。「すべての人々の毎日が光で満ちるように」と「祈り」を込めて作ったという。彼女の恩師、高田元太郎が編曲したJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番では、細部まで気を配りながら堂々とした彫琢を聴かせる。そこには角張った表現の類いは一切無い。カッチーニ「アヴェ・マリア」では、自身による優美な編曲も披露。誠実な発想から生まれ、隅々まで真摯に紡ぎ上げられた1枚だ。(渡辺謙太郎)祈り/河野智美◎バリオス:大聖堂 ◎J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ◎レゴンディ:ノクターン「夢」 ◎バリオス:フリア・フロリダ ◎横尾幸弘:「埴生の宿」の主題による変奏曲 ◎コンヴァース:祈り 他河野智美(ギター) タイトルは無論、欧州大陸を起点とした、グレートブリテン島のこと。アイルランド音楽の第一人者である守安夫妻と、特にイタリア・バロックで定評ある平井の出逢いのインパクトは、想像以上に大きい。熱気あふれるダンス・チューンに、心に沁みるバラード。チェンバロの音色に不思議とマッチする、数々の民族楽器。軽やかに囀るリコーダーと、尺八の音色をも髣髴させる、野趣に満ちたフルート。そして、合間にさりげなく忍ばせた、大バッハらバロックの巨匠たちの旋律。これらが時にコントラストを際立たせ、時に混然一体となり、誰も体験したことのない、眩い輝きを放つ。(寺西 肇)ドーヴァー海峡の向こう側〜アイルランド・スコットランド・イングランドのバロック音楽◎ロック:組曲第4番 ◎テレマン:カンタービレ ◎オズワルド:ローズラナ城 ◎オキャロラン:ミセス・エドワーズ ◎バルサンティ:キャサリン・オギー ◎パーセル:シフォーチの別れ 他守安功(フルート、リコーダー)平井み帆(チェンバロ)守安雅子(アイリッシュ・ハープ他)収録:2012年9月29日、横浜みなとみらいホール、2012年3月13日、東京芸術劇場(ライヴ)日本コロムビア COGQ-90〜1(2枚組) ¥3990収録:2013年1月、横浜みなとみらいホールマイスター・ミュージックMM-2164 ¥2957収録:2013年6月、真鍋記念館クララザールソニー・ミュージックダイレクトMECO-1017 ¥3000収録:2013年4月、五反田文化センターコジマ録音ALCD-1141 ¥2940SACDCDCDSACD
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