eぶらあぼ 2013.10月号
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82 アンサンブル名の由来は、イギリスのウェールズではない。「ラテン語の“verus(真実の)”です。『ネーミング辞典』という本を見て、感覚的に決めました。ヨーロッパでは良い名前だと言われますし、日本でも、『イギリスではない』と何度も説明して覚えてもらえたので、それもよかったです(笑)」 ウェールズ弦楽四重奏団は、2006年に桐朋学園の学生たちによって結成。08年ミュンヘン国際音楽コンクールで、東京クヮルテットの優勝以来38年ぶりの日本人団体入賞となる第3位を獲得。10年から揃って留学していたスイス・バーゼル音楽院を昨年卒業し、今年から日本を本拠に新たなスタートを切った。第1ヴァイオリンの﨑谷直人とチェロの富岡廉太郎は結成以来のメンバー。三原久遠(第2ヴァイオリン)が09年から参加、結成メンバーで現在NHK交響楽団のヴァイオリン奏者の横溝耕一(ヴィオラ)が今年1月から復帰した。今回の取材では第1ヴァイオリンの﨑谷直人に代表して語ってもらった。 「桐朋の室内楽講習会で東京クヮルテットのレッスンを受けるために組んだのが結成のきっかけです。最初からずっと続けるつもりで始めたわけではありませんでした。大きく変わったのは、ミュンヘンを受けると決まった時です。全員でコンクール前の3ヵ月をすべて空けて、毎日練習した。その感じがすごく充実して楽しかったのですね。それに、コンクールは結果として良い成績だったし、今聴いても良い演奏だったと思いますが、当時はどうやってそれができたのかわからなかったのです。弦楽四重奏について知らないことのほうが多くて、もっと続けて、もっと勉強したいと考えていました。コンクールのあとはオーケストラの首席のお誘いなども結構あって、それを全部断ってバーゼルに行ったのは、すごい覚悟だったと思います」 曲目はハイドンの第1番「狩」、ヤナーチェクの第1番「クロイツェル・ソナタ」、シューベルトの第15番。 「ハイドンはまさに作品1-1ですし、ちょうど僕らと同じ年代で書いた曲なので、このメンバーでのスタートにふさわしいと思います。ヤナーチェクはミュンヘンのコンクールでも弾いた曲。メインのシューベルトは、もっとベテランが弾いてこそというイメージがありますが、20代半ばの若い僕らだからこそ表現できることがあると思って、あえて取り組んでみました」 奇しくもこの6月、師匠格に当たる東京クヮルテットが活動を終えた。日本の弦楽四重奏の新しい時代が、若き4人の再出発とともに幕を開けようとしている。取材・文:宮本 明クァルテットの饗宴2013 ウェールズ弦楽四重奏団★10月18日(金)・紀尾井ホール●発売中問紀尾井ホールチケットセンター 03-3237-0061http://www.kioi-hall.or.jpハイドンの「作品1-1」は僕らのスタートにふさわしい曲ウェールズ弦楽四重奏団インタビュー 豪華という意味でも、貴重という意味でも、注目したいコンサートが《ザ・フレンチ・コネクション in 松本》だ。ベルリン・フィル首席フルート奏者のエマニュエル・パユ、同首席ハープ奏者のマリー=ピエール・ラングラメ、そして当代きっての若手実力派チェロ奏者のジャン=ギアン・ケラス。一夜限りの夢のトリオが松本で実現する。筆者がこのトリオを日本で聴いたのは5年前。東京・王子ホールで行われた公演で、洗練された演奏も、3名の“絵になる”ヴィジュアルともあいまって、ため息の出るような至福のひとときだった。今回の公演では、カーター「スクリーヴォ・イン・ヴェント」(フルート)や3人の名手による豪華共演に酔うザ・フレンチ・コネクション in 松本シューマン「幻想小曲集」(チェロ&ハープ)といったソロやデュオを織り交ぜつつ、ブルッフ「トリオのための8つの小品」、ヨンゲン「トリオのための2つの小品」、ラヴェル「ソナチネ」などでトリオを披露。フルート、チェロ、ハープの組み合わせ自体が珍しいことからも、室内楽ファンにとっては聴き逃せない公演になりそうだ。文:渡辺謙太郎★11月21日(木)・松本/ザ・ハーモニーホール ●発売中問ザ・ハーモニーホール0263-47-2004 http://www.harmonyhall.jp左から エマニュエル・パユⒸJosef Fischnaller/EMI Classics/ジャン=ギアン・ケラスⒸMarco Borggreveマリー=ピエール・ラングラメPhoto:Tomotsugu Oono

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