eぶらあぼ 2013.10月号
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72 最近“聴く吹奏楽”が面白い。クラシック畑の一線級指揮者の出演が加速して音楽的な幅が広がり、密度の濃い公演が増えている。元々そうした指向性を有する日本のトップ楽団である東京佼成ウインドオーケストラの場合はとりわけ顕著。今年4月にはチェコの巨匠エリシュカを招いて多大な成果を挙げた。そして10月、今度は飯守泰次郎が登場する。ドイツの歌劇場やバイロイト音楽祭で活躍し、東京シティ・フィルでの《ニーベルングの指環》ツィクルス等で絶賛された、日本を代表するワーグナー指揮者だ。演目生誕200年に出現する新サウンド飯守泰次郎(指揮) 東京佼成ウインドオーケストラは極め付けのオール・ワーグナー。しかも《マイスタージンガー》前奏曲などの定番曲や、吹奏楽界の古典「エルザの大聖堂への行列」のみならず、この形態ではまず聴けない《トリスタンとイゾルデ》の「前奏曲と愛の死」、《ジークフリート》の「森のささやき」が興味を盛り上げる。来年から新国立劇場の芸術監督にも就任する名匠が、いまだかつてない壮麗・重厚なサウンドを現出させることへの期待は大! 吹奏楽の愛好家も一般クラシック・ファンも必聴だ。文:柴田克彦第116回定期演奏会★10月18日(金)・東京芸術劇場●発売中問東京佼成ウインドオーケストラ事務局 03-5341-1155http://www.tkwo.jp飯守泰次郎マークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます) 今年85歳を迎えるイェルク・デームス。戦後のウィーンを生きて数々の大ピアニストから薫陶を受け、伝統を今に伝える。ウィーン楽友協会でのデビュー以来、第一線で演奏活動を続け、デビュー70周年を迎えた。近頃は毎年来日を重ねている巨匠が、今年も節目を祝うにふさわしいプログラムでリサイタルを行う。 ベートーヴェンのソナタ解釈についての著書もあるデームス。今回特に楽しみなのは、ソナタ第21番「ワルトシュタイン」と第30番だ。長きにわたり掘り下げられた音楽への洞察と、どっしり構えた体躯、自由な状態の腕と指先から繰り出ウィーンの伝統を継承する巨匠イェルク・デームス(ピアノ) 楽壇デビュー70周年記念される豊かな音色。すべてが一体となり、ベートーヴェンの神髄に迫る。また、フィッシャー・ディースカウやヨゼフ・スークらと共演を重ねてきたデームスは、伴奏者としても豊かな経験を持つ。来日中には、ヴァイオリンの三上亮、ソプラノの阿久津麻美とのデュオリサイタルにも出演。若手が伝統を受け継ぐ場面を目の当たりにすることになるであろう、こちらの公演にも注目したい。文:高坂はる香リサイタル ★11月9日(土)・東京文化会館(小)三上亮(ヴァイオリン)との共演 ★11月21日(木)・王子ホール阿久津麻美(ソプラノ)との共演 ★11月24日(日)・Hakuju Hall ●発売中問プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp 大人の気品とエレガンスを湛えた、オリヴィエ・ガルドンの奏でるシューマンとドビュッシー。初秋にこれほど心満たされるひと時を過ごせるのは幸せだ。フランスはニースに生まれ、1970年代にマルグリット・ロン・コンクールやエリザベート王妃音楽コンクールなど数々の国際舞台で入賞を果たしたガルドン。現在ではロン=ティボー国際コンクールで審査員を務め、パリ市立高等音楽院で同コンクールの優勝者を育成していることでも知られる。日本にも定期的に来日し、リサイタルや音楽大学でのマスタークラスを積極“静かなる驚き”に浸るオリヴィエ・ガルドン(ピアノ)的に行う信頼の厚いピアニストだ。そんな彼が10月のリサイタルで聴かせてくれるのは、シューマンの「アラベスク」と「幻想曲」、そしてドビュッシーの「ピアノのために」と「前奏曲集」第1集、第2集からの抜粋である。安定感と瑞々しさが同居し、静かなる驚きを与えてくれるガルドンの演奏に、しっとりと浸りたい。文:飯田有抄★10月11日(金)・浜離宮朝日ホール●発売中問ハル・プランニング03-3449-0428

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