eぶらあぼ 2013.10月号
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66ラザレフが刻むロシアの魂 Season Ⅱ スクリャービン1 第654回 東京定期演奏会10月18日(金)、19日(土)・サントリーホール ●発売中問日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp第91回 名曲全集 ★11月3日(日)・ミューザ川崎シンフォニーホール第615回 定期演奏会 ★11月4日(月・休)・サントリーホール ●発売中問TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511 http://tso.jp 2004年9月に東京交響楽団の音楽監督に就任したユベール・スダーンが、音楽監督としての最後のシーズンを迎えている。東京交響楽団から豊潤でしなやかなサウンドを引き出し、楽団を一段と成熟させた10年間にわたる功績は、改めて讃えるまでもない。 もとより「オーケストラとどんなにすばらしい関係が続いていたとしても、10年経ったら音楽監督を勇退する」と語っていたスダーン。そのバトンは次期音楽監督ジョナサン・ノットに引き継がれることになった。ラスト・シーズンにはこれまでのスダーン時代の集大成ともいえるようなプログラムが組まれることになった。 11月3日の名曲全集(ミューザ川崎)と、4日の定期演奏会(サントリーホール)でスダーンが取りあげるのはシベリウスのヴァイオリン協奏曲とブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」。シベリウスでは1989年生まれのレイ・チェンが独奏を務める。2009年スダーン美学の集大成ユベール・スダーン(指揮) 東京交響楽団エリザベート王妃国際コンクールで、最年少出場者でありながら優勝を果たした新星だ。スダーンによれば「いま若い世代でもっともすぐれたヴァイオリニストの一人」。 スダーンと東京交響楽団はこれまでにたびたびブルックナーの名演を聴かせてくれている。「ロマンティック」はスダーンにとってザルツブルクでも成功を収めた思い入れのある作品。このコンビの最良の成果を期待できるだろう。文:飯尾洋一ユベール・スダーンレイ・チェンⒸUwe Arens このところ音に厚みと伸びを増している日本フィル。これは名匠ラザレフの就任当時からロシアの名曲で佳演を重ねてきた成果だろう。2008年か熱狂と陶酔の世界への誘いアレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団ら始まったプロコフィエフ交響曲全曲演奏は12年に達成。11年からは特定の作曲家にスポットを当てたシリーズ《ラザレフが刻むロシアの魂》をスタートさせ、シーズン1では遅れてきたロマン派の巨匠ラフマニノフの主要管弦楽曲を2年間かけて骨太に聞かせてくれた。シーズン2はいよいよスクリャービンだ。 ラフマニノフより一つ年上で、ピアニストとしても嘱望されたスクリャービンは、華麗なロマン派的ピアニズムに裏打ちされた作風から出発した。後年は神秘主義思想にのめり込み、熱狂と陶酔へと突き進む濃厚な世界を描出したスクリャービン。音と色彩が関連して浮かんでくる共感覚の持ち主だったとも言われ、少々マニアックだがロシア音楽の底知れぬ深みを知るには欠かせない。ラザレフも機が熟してきたと考えているのだろう。 その第1弾(10/18)は5曲の交響曲のうち最大規模を誇る第3番「神聖な詩」が取り上げられる。全3楽章はそれぞれ「闘争」「快楽」「神聖なる遊戯」と題され、40分以上の堂々とした規模を持つ。そして、ロマン派から一歩進んだ後期のスクリャービンに独特なエクスタシーが兆しており、ニーチェの哲学からの影響も指摘されている。 プログラム前半にはチャイコフスキーの「眠れる森の美女」の名曲の数々と、フルートがオーケストラに水と夢のイマージュを反映させる武満徹の「ウォーター・ドリーミング」(独奏:真鍋恵子)が配されている。眠りから夢への推移が、スクリャービンへの導きの糸を作っていくところも心憎い。文:江藤光紀アレクサンドル・ラザレフⒸ山口 敦

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