eぶらあぼ 2013.10月号
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60室内楽2 シューベルトの「ます」 ★11月7日(木)リサイタル2 情熱と憧憬 ★11月9日(土) 会場:紀尾井ホール ●発売中問紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp★12月10日(火)・サントリーホール●発売中問読響チケットセンター0570-00-4390http://yomikyo.or.jpマークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます) カンブルラン&読売日本交響楽団の12月定期はバルトークを中心にしたプログラムだ。今回の選曲では、卓抜なオーケストレーションで目にも綾なスペクタクルを展開してくれるバルトークの醍醐味が味わいつくせる。最晩年の白鳥の歌ともいうべき「ピアノ協奏曲第3番」を弾くのはハンガリー人を父、日本人を母に持つ話題の若手、金子三勇士だ。民衆に伝わる舞踊の躍動感を濃縮した「ルーマニア民族舞曲」は6つの小曲からなるが、それぞれが独特なリズムや和声を持つ人気楽曲だ。メインは宦官が少女に誘惑される様を狂おしく、そしておどろおどろしく描くバルトーク盛期の傑作「中国の不思議な役人」組曲。演奏が難しい上に内容も過激なことから、作曲当時何度も上演禁止の憂き目にあった問題作だ。 導入には同郷ハンガリー人、リゲティの「ロンターノ」が置かれている。少しずつ異なった動きが重なり合い、遠くのほうからかすかに表れた兆しが巨大カンブルランが描くバルトークの深淵シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団な積乱雲のように発展する。ナチスから共産圏の支配下へと移行したハンガリーでは、最先端の現代音楽は禁じられていたから、青年期のリゲティにとってバルトークは現代音楽そのものだった。両者は作風こそ異なるが、抽象的な思考が感性を刺激するところまで血肉化されている点で共通する。またルーマニアとの国境付近で生まれたリゲティにとって、「ルーマニア民族舞曲」には懐かしい響きが盛り込まれていたはずだ。 現代ものには定評があり、長くウィーンの現代音楽集団クラングフォーラム・ウィーンの首席客演指揮者の任にあるカンブルランのこと、気心知れた読響をリードして緻密かつツボを得た演奏を聴かせてくれるはずだ。文:江藤光紀シルヴァン・カンブルランⒸ読響 Photo:青柳 聡 紀尾井ホールにおいてベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会を行い、高い評価を得たペーター・レーゼル。力強いタッチから生み出されるクリアで豊かなピアノの音色も素晴らしいが、それだけでなく、演奏家として心からその作品に共感し、作品そのものの大きさを示す演奏は、現在の若いピアニストには無い精神性を感じさせてくれた。そのレーゼルが《ドイツ・ロマン派ピアノ音楽の諸相》と題して3年間にわたるプロジェクトを行っている。2013年はその2年目で室内楽コンサートとリサイタルが行われる。 室内楽ではライプツィヒ弦楽四重奏団とコントラバス奏者の河原泰則が共演。メンデルスゾーンとシューマンの弦楽四重奏曲の後に、シューベルトの「ます」が演奏される。ベートーヴェンとほぼ同時代に生きながら、独自のロマン性、歌の世界を開拓したシューベルト。コントラバスを入れたユニークな編成の室内楽「ます」は、シューベルト作品への共感と深い精神性ペーター・レーゼル(ピアノ) ドイツ・ロマン派ピアノ音楽の諸相 2013の音楽仲間たちとの交流も想像させてくれる作品だ。名手・河原とレーゼルの共演がとても興味深い。 ドイツ・ロマン派の音楽は短い時間の中で大きな変貌をとげていった。リサイタルではシューベルトから始まり、ブラームス、ウェーバー、シューマンが演奏される。《情熱と憧憬》というサブタイトルに最もぴったりな作品は、シューマンのピアノ・ソナタ第1番だろう。レーゼルの磨き抜かれた音によってシューマンの音楽の魅力が輝きだす。文:片桐卓也ペーター・レーゼル Photo:三好英輔ライプツィヒ弦楽四重奏団
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