eぶらあぼ 2013.9月号
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63 次世代のフルート界を担う新鋭・上野星矢が待望の2ndアルバムをリリース。前作と同様に斬新なジャケ写ワークが目を引くが、収録曲でも耳馴染みの好い超名曲ばかりを集めたデビュー盤から一転して、今回は“攻め”の1枚。 「最初に、近代フルート作品の中でも特に重要なプーランクやドビュッシーを堪能して、その響きの中に潜むジャポニズムを感じとって現代の邦人作曲家の作品へと向かう、そんな一連の流れを楽しんでもらえたら嬉しいですね」 アルバムのタイトル曲でもある「デジタルバード組曲」は、鳥にちなんだ数多くの作品を生み出していることでも知られる人気作曲家、吉松隆が30年程前に書いた作品。それまであまり演奏される機会がなかったこの難曲を、上野星矢はCDデビュー前の2011年のリサイタルでも採り上げ、センセーショナルな話題を集めた。 「とにかく1曲目〈鳥恐怖症〉の出だしから衝撃的。ピアノとフルートというのはよくある編成ですが、ここでは完全にユニゾンで始まり、その音階がもたらす印象は限りなくシンセサイザーのサウンドに近いですね。ただ鳥のさえずりを再現するのではなくて、それをデジタル化したみたいに…。僕のイメージではサイボーグに改造された鳥に残る野生の心のような、その哀しくも美しい歌声が作り出す組曲なのです。自分も人間的なテクニックを超えた存在になったつもりで演奏します。また、吉松さんらしいロックな要素も好きで、それも大切にしました」 2008年にジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクールで優勝した時の演奏を聴いて惚れ込んだというパリ在住の作曲家・上林裕子が、彼のために書き下ろした12分半にも及ぶ大曲「クリスタルの時」も聴きもののひとつ。 「和声やメロディ、リズムに対する感覚が驚くほど僕にぴったり。自分らしさを思う存分発揮できる作品です」 ラストを飾るのは、奇しくもレコーディング直後の4月21日に85歳で死去したダマーズの演奏会用ソナタ。 「昔から好きな作品。曲にストーリー性があって、時にミュージカルの舞台を観ているような瞬間があります」 11月にはHakuju Hallでリサイタルを開く。上記の邦人作曲家作品に加えて没後50年のプーランクの「エディット・ピアフに捧ぐ」など洗練されたフランスもの、さらにバッハのソナタBWV1030などもとりあげる。 「Hakuju Hallは響きが素晴らしくてとても吹きやすいホール。シートの座り心地も抜群なので、ついウトウトしてしまった人も『デジタルバード組曲』の演奏できっと覚醒するはず(笑)。ステージでもフルートの可能性を限界まで追求したいですね」取材・文:東端哲也★11月28日(木)・Hakuju Hall●発売中問森音楽事務所03-6434-1371http://www.mori-music.comサイボーグ鳥の歌声を聴かせます!上野星矢(フルート)インタビュー 札幌コンサートホールKitaraのシンボル的な存在である大ホール正面のパイプオルガン。フランスのストラスブールでオルガンの伝統的なスタイルを守るアルフレッド・ケルン社が2年の歳月をかけて製作したもので、ふくよかな音色と機動性を備えた世界有数の名器だ。その魅力を広く伝えるべく、ヨーロッパの若く才能豊かなオルガニストを毎年招聘してきた同ホールだが、この9月から16代目の専属オルガニストが着任する。ルーマニア生まれ、フランス育ちの27歳、オクタヴィアン・ソニエだ。そのお披露目となる10月のリサイタルでは、J.S.バッハ、ヴィエルヌ、ホールと共に歩む1年のスタート第16代札幌コンサートホール専属オルガニスト オクタヴィアン・ソニエ デビュー・リサイタルフランク、ヴィドールなどを披露。オルガンの定番であるJ.S.バッハの傑作、そしてフランスが生んだ近現代の巨匠たちの作品をどのように弾くのか。過去15人の専属オルガニストたちが、同ホールでの1年間の活動をきっかけに大きく成長し、羽ばたいていったことからも、期待と注目が集まる。文:渡辺謙太郎★10月19日(土)・札幌コンサートホールKitara ●発売中問 Kitaraチケットセンター  011-520-1234http://www.kitara-sapporo.or.jp【CD】『デジタルバード組曲』日本コロムビアCOCQ-85021 ¥29408月21日(水)発売

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