eぶらあぼ 2013.9月号
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44 20世紀の日本を代表し、今も世界的に最高級の評価を得る作曲家・武満徹。彼はまた、すばらしい流行歌の創作者でもあった。その作品は、誰でも一度聴けば口ずさめる平易で魅力的なメロディに溢れる一方、時に日本人ならではの心の機微を捉え、時には鋭い白刃のようなメッセージ性をもはらんでいた。豊かな自然を背景に、優れた演奏を楽しむ八ヶ岳高原サロンコンサートでは今回、そんなタケミツ・メロディを特集。笹子重治(ギター)ら名手で構成され、ジャンルを超越した活動を展開する「ショーロクラブ」に、ヴォーカリストとしてコアな音楽ファンから絶大な支持を受けるアン・サリーとおおたか静流(しずる)、そして高原で聴くタケミツ・メロディ八ヶ岳高原サロンコンサート 武満徹 ソングブック・コンサートショーロクラブ with ヴォーカリスタス実力派バリトンの松平敬による「ヴォーカリスタス」が加わり、「翼」「めぐり逢い」「小さな空」「死んだ男の残したものは」など、深遠にして滋味あふれる歌の数々をじっくりと。武満が同時代の人々に訴えようとした“日本人の心”は、時代を超え、今の私たちの胸にも迫って来る。文:寺西 肇★9月28日(土)・八ヶ岳高原音楽堂 ●発売中問 八ヶ岳高原ロッジ0267-98-2131 http://www.yatsugatake.co.jp武満 徹ⒸTetsuya Fukuiショーロクラブ★11月18日(月)、19日(火)・東京オペラシティコンサートホール、21日(木)・東京芸術劇場 ●発売中問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演 11/20(水)・東京文化会館(都民劇場03-3572-4311)、11/23(土・祝)・アルモニーサンク北九州ソレイユホール(北九州国際音楽祭093-663-6567)、11/24(日)・兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255) バーミンガム市響といえばラトルのもとで世界的な楽団へと成長を遂げ、ラトルもベルリン・フィルに転出するという、“幸運の女神”に見初められたオーケストラ。そして次につかんだ“宝石”が、2008年より音楽監督を務めているアンドリス・ネルソンスだ。30代半ばだが現在大ブレイク中で、世界のトップオケや名門歌劇場からオファーが引きもきらない。来年からはボストン響の音楽監督にも就任する。 この人、オーケストラをきちんと鳴らす基礎力に加えて、パワフルでエネルギッシュな指揮ぶりはどこか同郷の師匠ヤンソンスを思わせる。だがその音楽には個性的なえぐみもあり、ウィーン・フィルやベルリン・フィルを相手にしてブレイク中の俊英指揮者、手兵と共に現るアンドリス・ネルソンス(指揮) バーミンガム市交響楽団も、物怖じせず堂々と自分の音楽をやってしまうという度胸の持ち主でもある。バーミンガム市響との共演も5年目に入るが、あの鮮烈・精緻なサウンドがどう変貌しているのだろうか。 プログラムは2種類。11月18日と21日は《ローエングリン》より「第1幕への前奏曲」を導入として、ヒラリー・ハーンがシベリウスのヴァイオリン協奏曲を弾き、さらにウィーン・フィルとの来日公演でも披露したネルソンスお得意の「新世界より」が控える。19日にはベートーヴェン「プロメテウスの創造物」序曲ではじまり、ピアノ協奏曲第1番(ソロ:エレーヌ・グリモー)、交響曲第4番というブラームスの大作2曲が続く。共演するソリストも美女揃い(もちろん見た目だけでなく、二人とも超一流の実力派)で、とにかく華やかな話題に事欠かない。今後の世界の音楽シーンの動向を占う公演、といっても過言ではないだろう。文:江藤光紀アンドリス・ネルソンスⒸMarco Borggreveエレーヌ・グリモーⒸMat Hennek/DGヒラリー・ハーンⒸPeter Millerバーミンガム市交響楽団ⒸNeil Pughマークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます)
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