eぶらあぼ 2013.9月号
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ぴっくあっぷ170 日本ではいまだ広く知られているとは言い難いカール・レーヴェの演奏・研究の第一人者佐藤征一郎が、1996年に開いた作曲家生誕200周年記念リサイタルのライヴ。第一人者と書いたが、佐藤はほとんど孤軍奮闘で、シューベルトと同時代の、この“もう一人の歌曲王”の紹介に尽くしてきた。レーヴェの物語性に富む歌曲(バラード)を佐藤は「楽劇的時空間」と位置づけているが、旋律とドラマとが緻密なバランスで結びついた佐藤の演奏も、まさに楽劇的。絶妙な語り口に引き込まれる。演奏者自身の邦訳・解説による、手作り感あふれるライナーも貴重な資料となろう。(宮本 明)カール・レーヴェ生誕200周年(1996年)記念リサイタル/佐藤征一郎カール・レーヴェ:◎マリアムネを悼むヘロデの嘆き ◎時計 ◎ほの光る海 ◎オルフ ◎エドワルド ◎詩人トム ◎荒れ果てた水車小屋 ◎魔王 ◎海を渡るオーディン ◎オウム ◎おやすみ 他佐藤征一郎(バリトン)ダルトン・ボールドウィン(ピアノ) ウィーン楽友協会創立200周年を記念し、創立時の演奏会を再現する形で昨年11月に行われたステージのライヴ録音。モーツァルト編曲のヘンデル「アレクザンダーの饗宴」を、200年前の創立演奏会にあたって、さらに手が加えられた版を用い、しかも当時の仕様の楽器や編成で演奏するという凝りよう。総勢200人という大編成は、重戦車さながらのド迫力。そこへソリスト陣の熱唱や、フォルテピアノによる斬新な響きのコンティヌオが加わり、果てはユーモアいっぱいのアーノンクールによるスピーチ、聴衆による合唱まで飛び出して、祝祭的なムードが一気に盛り上がる。(寺西 肇)ヘンデル〜モーツァルト:オード「アレクザンダーの饗宴」/ニコラウス・アーノンクール◎ヘンデル〜モーツァルト/モーゼル編:オード「アレクザンダーの饗宴(ティモテウス、または音楽の力)」ニコラウス・アーノンクール(指揮)ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスウィーン楽友協会合唱団ロベルタ・インヴェルニッツィ(ソプラノ)ヴェルナー・ギューラ(テノール)ジェラルド・フィンリー(バス) マイケル・ジャクソン楽曲集が人気を博した東京佼成ウインドオーケストラによる《THIS IS BRASS》シリーズの第2弾。原曲の美しさを尊重しつつ、吹奏楽独特の音の厚みと切れ味が効いている。「ウィ・ウィル・ロック・ユー」では美しいファンファーレ風のスタートが印象的。デヴィッド・ボウイとのコラボ曲「アンダー・プレッシャー」では有名なベースラインはそのままに、佼成ウインドらしいカラフルなサウンドでメロディを引き立たせている。「ボヘミアン・ラプソディ」のシンフォニックなサウンドはまさに圧巻。QUEENファンも、吹奏楽ファンも虜にする魅力的な一枚。(大塚正昭)THIS IS BRASS〜QUEEN/東京佼成ウインドオーケストラQUEEN:◎ウィ・ウィル・ロック・ユー ◎ドント・ストップ・ミー・ナウ ◎ショウ・マスト・ゴー・オン ◎アンダー・プレッシャー ◎伝説のチャンピオン ◎ボヘミアン・ラプソディ 他松沼俊彦(指揮)東京佼成ウインドオーケストラ ベネズエラの凄腕トランペッター、フローレスの初ソロCD。彼は2つのコンクールで超絶奏者のルベン・シメオを抑えて優勝した実力を誇り、グラモフォンからのデビューもそれを証明している。本作の魅力は、トランペット曲ではないバロック〜古典作品を9種類の楽器で吹き分け、その結果各曲の特長や持ち味の違いを鮮明に浮き彫りにしている点。そして何より素晴らしいのは、通常派手なピッコロを含めて、技巧(これも凄いが)よりも音楽自体が美しく耳に届く点にある。楽器の聴き比べも興味深いが、すべてが温かく清々しいこの演奏は、同楽器ファン以外にも強くお薦め。(柴田克彦)カンタール/パーチョ・フローレス◎ヘンデル:シバの女王の入場 ◎ネルーダ:トランペット協奏曲 ◎J.S.バッハ:来たれ、異教徒の救い主よ ◎チマローザ:協奏曲 ◎エフレイン・オッシャー:孤独 ◎タルティーニ:トランペット協奏曲 ◎ビンボ:ソイ・トゥ・アイェル 他パーチョ・フローレス(トランペット)クリスティアン・バスケス(指揮)ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団収録:1996年11月11日、音友ホール(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7729 ¥2625収録:2012年11月、ウィーン、ムジークフェラインザール(ライヴ)ソニーミュージック SICC-30120〜1(2枚組) ¥3990ユニバーサルミュージックTOCF-90022 ¥2800収録:2013年2月,3月、ベルリン、コンツェルトハウスユニバーサルミュージックUCCG-1631 ¥2600CDCDCDCD
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