New Release Selection

【SACD】メンデルスゾーン:劇付随音楽「夏の夜の夢」/I.フィッシャー&ブダペスト祝祭管

 創設から30年以上続くコンビの最新盤。全体に極めてしなやかな名演だ。「夏の夜の夢」は、「序曲」の冒頭から繊細な響きに耳を奪われ、柔らかな運びに魅せられる。「斑模様の蛇よ」の歌声も快調で、バックのこまやかな動きがさらに見事。「夜想曲」はホルンの美感が際立ち、「結婚行進曲」は意外なまろやかさが新鮮だ。「葬送行進曲」はクラ…

【CD】笙韻若水〜真鍋尚之 作曲と笙の世界〜

 真鍋尚之は笙奏者にして作曲家でもある。これはその接点に生まれたアルバムだ。まず冒頭の「呼吸III」に、「笙は和音を作る楽器」という先入見を粉々に打ち砕かれた。重力から解放されたかのように笙が運動性を持ち、自在に疾走する。すると清涼というのとは正反対に、ほんのりとしたエロスが漂い出す。「Trio」では驀進する箏に暴力的…

【CD】ファンタジー/大伏啓太

 2015年ドイツのピアナーレ国際ピアノコンクールに優勝。現在、母校東京藝大や桐朋学園大で後進の指導にあたりながら演奏活動を行う大伏啓太のデビュー盤。冒頭に収録されたシューマン=リストの「献呈」から、輝かしく、同時に重みのある音で耳を引きつける。ブラームスの「8つの小品」も、ごく自然に美しい緩急をつけつつ、1曲ごと巧み…

【CD】J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲)/小林美恵

 1990年にロン=ティボー国際コンクールのヴァイオリン部門で、日本人として初の覇者となった小林美恵。わが国を代表する名手として活躍を続ける小林による、バッハの無伴奏録音は、スケールの大きな音楽創りが印象的だ。楽器を存分に鳴らし切り、暗示に終始しがちな和声も、可能な限り現出。「ソナタ第1番」のアダージョや「パルティータ…

【CD】余韻と手移り/高橋悠治

 ぽつりぽつりと置かれるリズムに奇妙な節回しを乗せたバッハのパルティータに始まり、小さな鐘の共鳴(ナッセン)や日本的な情緒を宿した煌めき(増本伎共子)が続く。激しくごつごつとしたテクスチュア(高橋、ヴィヴィエ)には、シンプルな点描風景(石田秀実)が対比される。響きの万華鏡が過ぎていった後のチマローザは、しみじみと美しい…

【CD】影からの音たち 橋本京子プレイズ W.A.モーツァルト

 モーツァルトのアルバムというと、プレイヤーにセットした瞬間、底抜けに明るい響きが流れてくるかと思いきや、国際的に信頼の厚いピアニスト橋本京子の新譜はまるで違う。「影からの音たち」と題されたこのCDは、ロンド イ短調、幻想曲 ハ短調、アダージョ ロ短調など、短調のピアノ曲が中心。繊細かつ自然なタッチで、多層的で陰影の深…

【CD】MISSING LINK of TOMITA 〜冨田勲 日本コロムビア初期作品集 1953-1974〜

 「ミッシング・リンク」とは、生物学で進化の過程にある間隙を指す。アコースティックからデジタル、そして両者の融合と、常に“進化”を続けた冨田勲の音楽創り。当盤は、教育現場向けの作品や草創期にあったテレビ番組の主題歌など、その最初期の知られざる作品を集成している。未だ“戦後”を感じさせ、なぜか懐かしさも胸に迫るモノラル作…

【SACD】レーガー:ベックリンによる4つの音詩、ツェムリンスキー:交響詩「人魚姫」他/上岡敏之&新日本フィル

 上岡&新日本フィルのライヴCD第4弾。まずは、20世紀初頭の“後期ロマン派の翳”ともいうべき3作品を収録した、日本のオーケストラには稀な内容が光っている。レーガー作品はとりわけ繊細で美しく表出され、レアな曲の魅力を伝えるに充分。ニールセンの序曲は、曲全体の起伏が精緻かつスケール大きく表現され、ツェムリンスキーの交響詩…

【CD】ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 /佐渡裕&トーンキュンストラー管

 ショスタコーヴィチの5番は佐渡と特に相性がよい曲。第1、第3楽章ではどっしり巨匠的な表現が生き、またスケルツォや終楽章ではスポーティーな運動性が前面に押し出される。特にフィナーレはオケをコンパクトにドライヴしながら進め、速度を落とした後、燻すように膨らませて輝かしいクライマックスを導く。トーンキュンストラー管は引き締…

【CD】アンダルーサ/マリア・エステル・グスマン

 多数のコンクールで優勝、2012年にはセゴビア賞のメダルを授与され、「ギター界の女王」と称えられるグスマン。セビーリャ生まれの彼女があえて母国の名品に取り組んだアルバムは、華美にならない重めの音色、地に足がついたコードの響き、隅々まで考え抜かれた解釈で構築されている。そこにカラッとした空気感や絶妙なリズム感も妙味とし…