梅田俊明(指揮) 東京都交響楽団 日本管弦楽の名曲とその源流―18

最前線の響きを堪能


 都響が毎年企画している《日本管弦楽の名曲とその源流》は、現代日本の作曲家の主要作とともに、その作曲家と関連のある欧米の曲(すでに古典となっている作品が多い)をセットにして年間2プログラム上演するもので、今年9年目を迎えた。在京オケが定期演奏会で邦人作品を取り上げる貴重な場だが、昨年からプロデューサーが別宮貞雄から一柳慧にバトンタッチ、選曲のテイストも変わってきた。過去を振り返るだけでなく、時代の一歩先を予見する先鋭性が出てきたように思う。
 第18回は安良岡章夫(やすらおか・あきお)にスポットを当てる。安良岡は1958年生まれの55歳。東京芸大で作曲を教えると同時に、現代曲を専門に演奏する室内オーケストラ、アール・レスピランを設立。創作・教育・演奏実践と、日本の現代音楽の最前線を走っている。今回は協奏的作品が2曲取り上げられるが、いずれもあらゆるパートが独立的に動きながら躍動し、独奏者と密度の濃い饗宴を繰り広げていく。「レイディアント・ポイントⅡ」(2001/05)は多彩な音色を次々に炸裂させる打楽器ソロ(安江佐和子)に、金管楽器をはじめとするオーケストラが束になって襲い掛かる。「ポリフォニア」(1996)はヴィオラと各楽器が緻密な絡みを見せたかと思えば、管弦楽が独奏者を波のように包んでいく。そしてシェーンベルク初期の無調作品で後進の作曲家に大きな影響を与えた「5つの管弦楽曲op.16」。管弦楽の緻密な扱いは安良岡に通じるものもある。ヴィオラ・ソロの川本嘉子はかつて同団ヴィオラ首席も務めた。古巣との共演だ。指揮の梅田俊明は都響との共演歴も長く、安定したリードを見せてくれるだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2013年12月号から)

第765回定期演奏会Aシリーズ
★2014年1月23日(木)・東京文化会館 Lコード:34889
問 都響ガイド03-3822-0727
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