尾高忠明(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団「第九」

実力派ソリストの饗宴に注目


 2011年は佐渡裕の指揮による熱い演奏で楽団創立100周年を締めくくり、昨年は大植英次率いるドイツ圏で活躍する実力派ソリストとの競演と、このところ話題に事欠かなかった東京フィルの「第九」。今年は1974年から長らく同楽団の“顔”として活躍し、現在は桂冠指揮者の任にある尾高忠明が登場。2010年からは新国立劇場の芸術監督も務め、大震災直後の同フィル「第800回定期」での渾身のタクトと感動的なスピーチが今なお語り継がれる尾高だけにその手堅い演奏に期待が集まる。
 そして「第九」といえばやはり気になるのがソリスト陣。今回も魅力的な4人が集結。安井陽子は超絶技巧に長けたコロラトゥーラ・ソプラノのフレッシュな逸材で、宗教曲のソリストとしても定評がある。アルトの山下牧子は、昨年《響きの森クラシックシリーズ》の東京フィル「第九」で圧倒的な歌唱を披露しており、その実力は証明済み。テノールの小原啓楼は先ごろ《スポーツ祭東京2013》の総合開会式で4万人の観衆を前に、「君が代」と炬火入場及び点火式に合わせて《トゥーランドット》の「誰も寝てはならぬ」を熱唱し、会場を沸かせたのも記憶に新しい。そして、萩原潤もドイツを中心に欧州各地で研磨を積み、安定した歌唱力で数多くのコンサートや録音に参加している人気バリトンだ。もちろんカップリング作品の《コリオラン》序曲も聴き逃せない。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2013年11月号から)

★12月19日(木)・東京オペラシティコンサートホール 
 21日(土)・サントリーホール
 22日(日)・Bunkamuraオーチャードホール
問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
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