西本智実×日本フィルハーモニー交響楽団 ミュージック・パートナー・シリーズ

これはまだ誰も体験していない

Ⓒ大木大輔
Ⓒ大木大輔

 これこそまさに新機軸だ。壁一面に映し出される映像と共に、オーケストラが豪奢な音楽を奏でる。それもままある映像付きコンサートではない。映像はプロジェクションマッピングという注目の手法、会場はサントリーホール、演目はチャイコフスキーの三大バレエ、演奏は西本智実指揮する日本フィル…と揃えば、すべての面で鮮烈なステージを予感させる。
 同公演は、日本フィルがミュージック・パートナーの西本智実と共に始める新プロジェクト、ミュージック・パートナー・シリーズ(MPS)だ。視覚と聴覚の不思議な調和や相乗効果に注目してきた指揮者・西本が、その感性を活かして行う、映像付きコンサート・シリーズである。要を担うアートディレクターは田村吾郎。彼は、東京・春・音楽祭などで頭角を現し、「音楽は五感に作用する力を持つ」との考えから独自の視覚芸術を展開している。肝となる「プロジェクションマッピング」とは、建造物と映像を融合してエンターテインメントを創造する手法。昨年の東京駅赤レンガ駅舎オープニングイベントが好例だ。
 演目は、「くるみ割り人形」「白鳥の湖」「眠れる森の美女」の順で1回1演目が上演される(抜粋版)。西本は外来オペラを再三指揮し、プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」で新方式の踊り付き演奏を行うなど、視覚とのコラボに実績があるし、日本フィルとは「くるみ割り人形」全曲のCDを録音してもいる。日本フィルは今年9月の《ワルキューレ》第1幕で出色の劇場音楽を聴かせており、その顕著な充実ぶりと相まって、演奏面での期待も高い。
 この新芸術体験を得られるのは会場でのみ。それゆえまずは足を運ぼう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2013年11月号から)

プロジェクションマッピング(※テスト照射/実際の映像とは異なります)
プロジェクションマッピング(※テスト照射/実際の映像とは異なります)

Vol.1 11月24日(日)・くるみ割り人形
Vol.2 2014年1月18日(土)・白鳥の湖
Vol.3 2014年4月12日(土)・眠れる森の美女
会場:サントリーホール 
問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
MPS特設ウェブサイト http://mps.japanphil.or.jp