スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ (指揮)読売日本交響楽団

驚異の巨匠の革命的バースデイ

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(c)読響

今年の10月3日はスクロヴァチェフスキの90歳の誕生日だ。そしてまさにその日彼は、読売日本交響楽団を振って、ベルリオーズの「ロミオとジュリエット」(抜粋)とショスタコーヴィチの交響曲第5番を披露する。とにかく元気だ。2010年読響の常任指揮者を退任後も毎年来日している点や、指揮台上の動きといった身体的な元気さもさることながら、何より音楽自体の元気さが凄い。この年齢の巨匠となれば普通、悠然たるテンポで枯れた演奏になるものだが、彼はそうではない。いつも動的なエネルギーと前進性溢れる剛直にして明晰な音楽を創出し、純粋な感銘を与える。そこが真に敬服すべき点だろう。
今回はまず、ショスタコーヴィチの交響曲第5番が大注目だ。十八番の一人である同作曲家の作品は読響でも数回取り上げており、中でも09年の交響曲第11番は峻厳・激烈な名演だった。さらに第5番は、1961年のミネアポリス響、90年のハレ管との録音で、引き締まった快演を残している得意の作品。彼の現代作曲家の視点から斬られた音楽は、社会主義的な高揚感や暗さを離れて、シリアスでモダンな20世紀音楽たる姿を露にし、壮絶かつ新鮮な感動をもたらすに違いない。また「ロミオとジュリエット」は、11年にカンブルラン&読響が精緻な美演を聴かせた作品。後任のフランス人シェフが磨いたサウンドを、巨匠がどう料理し、いかなる新味を堪能させてくれるのか、こちらもすこぶる興味深い。
まあ何にせよ、90歳の誕生日に日本まで来てハードな曲を振るとは…感服!

文:柴田克彦
(ぶらあぼ2013年9月号から)

第564回サントリーホール名曲シリーズ
★10月2日(水)・サントリーホール
第3回東京オペラシティ・プレミアムシリーズ※
★10月3日(木)・東京オペラシティコンサートホール
第67回みなとみらいホリデー名曲シリーズ
★10月6日(日)・横浜みなとみらいホール
問読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp
※第1部:読響メンバーによる室内楽、第2部:上記2公演と同プログラム。