オペラ・フレスカ公演 《ポッペアの戴冠》

巨匠モンテヴェルディの3大オペラに挑む!

彌勒忠史

コルネットとリコーダーの名手・濱田芳通が率いる古楽集団「アントネッロ」によるオペラ・プロジェクト「オペラ・フレスカ」がスタート。その第1弾として、17世紀イタリアの巨人モンテヴェルディの傑作《ポッペアの戴冠》を取り上げる。ちなみに第2弾は《オルフェオ》(12/4)、第3弾は《ウリッセの帰還》(2014/3/21)。濱田の指揮のもと、カウンターテナーの彌勒忠史が演出を担当。実力派ソリスト陣と共に、わが国のバロック・オペラ上演史に、新たな1ページを記す。

モンテヴェルディの絶筆とも伝わる《ポッペアの戴冠》は、ローマ皇帝ネロと愛人ポッペアを巡る愛憎劇で、セリア(悲劇)でありながら、ブッファ(喜劇)の要素も併せ持つ傑作。1642年に初演されたが、1920年に再発見されるまで、数百年にわたって眠り続けていた。決して“綺麗ごと”では済まさない、人間の真実に斬り込む音楽表現は、現代に生きる我々にとっても鮮烈。一方で、声楽とバス譜しか伝わっていないため、上演の良し悪しは、そこに携る者のセンスが大きく作用する。
瑞々しい感性によって、初期バロック作品へ新たな命を吹き込み、洗練されたサウンドを生み出してきた濱田。そして、数々のプロデュース公演でも大活躍の、しなやかな感性を持つ彌勒。そこへ和泉万里子(ポッペア)や澤村翔子(オッターヴィア&フォルトゥーナ)、酒井崇(オットーネ)、そして歌手としても参加する彌勒(ネローネ)ら古楽とオペラの両方に精通するキャスト、アントネッロの管弦楽による高い表現力が一体に。「初演時もかくや」という衝撃体験が、待っている

文:寺西 肇
(ぶらあぼ2013年9月号から)

★9月3日(火)・川口総合文化センターリリア音楽ホール
問 リリア・チケットセンター048-254-9900 http://www.anthonello.com