ペトル・アルトリヒテル(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

歴代の巨匠たちから受け継いだチェコ音楽の真髄

ペトル・アルトリヒテル

 スメタナが祖国チェコの伝説と自然を音に紡いだ連作交響詩「わが祖国」。有名な「モルダウ」をはじめとする6曲からなるこの連作交響詩は、単に土地の風物を巧みに描くだけではなく、民族復興の精神が標題音楽に結晶化しているからこそ、不朽の名作とされるのだろう。この作品は歴代のチェコの名指揮者たちにとっての欠かせないレパートリーとなっている。
 この秋、新日本フィルで「わが祖国」を指揮するのは、ペトル・アルトリヒテル。チェコの名指揮者たちの系譜につながるマエストロである。実は2017年にアルトリヒテルは2度にわたって来日して、「わが祖国」を披露している。一度はプラハ交響楽団と、もう一度はチェコ・フィルとの共演だった。当初チェコ・フィルは首席指揮者であったビエロフラーヴェクとの来日が予定されていたが、ビエロフラーヴェクが急逝したため、アルトリヒテルが代役を任されることになった。アルトリヒテルは同年の「プラハの春音楽祭」でもやはりビエロフラーヴェクの代役を務めている。もともと若き日にチェコ・フィルで名匠ヴァーツラフ・ノイマンのアシスタントを務めていたというアルトリヒテルだけに、チェコ音楽の真髄を聴かせる指揮者としてこれほどふさわしい人もいない。
 アルトリヒテルが新日本フィルとどんな化学反応を起こすのか。きっと日本のオーケストラにはない土の香りをもたらしてくれるにちがいない。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2018年9月号より)

第594回定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉
2018.9/23(日・祝)14:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
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