マリア・エステル・グスマン(ギター)

女王の紡ぎ出す美音が耳を奪う

Photo:Yasuhisa Yoneda

 時に情熱的に、時に静謐に。しなやかな音楽創りで世界中の聴衆を魅了、「ギター界の女王」と称されるスペインの名手、マリア・エステル・グスマンが、グラナドスやアルベニスを軸に、珠玉の傑作へ対峙した新アルバム『アンダルーサ』をリリースした。「美しい作品と純粋で美しい音を楽しんでほしい。聴き手が私の演奏を一味違うと感じて、感動を与えられれば…」と録音に込めた思いを語る。
「収録したうちの幾つかは、私たちギタリストにとって、基礎となる重要な作品。グラナドス、アルベニス、リョベートはクラシック・ギターに豊かな表情を植え付け、極めて独特な演奏スタイルによって、一時代を築きました。それを踏まえた上で、私はアルベニス自編の『カプリチオ・パバーナ』やモンポウの『歌と踊り』、リョベート編曲による民謡と、あまり演奏機会に恵まれない作品も交えました」
 全篇で耳を奪うのが、撥音の美しさはもちろん、転調や楽想に伴う劇的な音色の変容や、主旋律と伴奏旋律のバランス感覚の良さだ。
「私は音色の変化に大きな注意を払っています。同じフレーズの繰り返しの時は決して同じに弾くべきではなく、作品の構成やダイナミクス、色彩、撥音の方法などを見極め、変化をつけます。これこそがギターにとっての最大の持ち味。これにより、豊かな表情を生み出せるのです」
 かたや、音が鳴っていない休符の場面での響きの制御も絶妙。
「休符=間(ま)は、緊張感やミステリアスさを刻み付けるもの。旋律=フレーズと同じ重要性を持っています。ですから、私は常にフレーズと間の取り方には気を配って取り組んでいます。そして、どこが最も高揚するパッセージであり、最も静けさを要求される部分かを見分けていくのです」
 常に音楽とギターが傍らにあった。
「母が音楽好きで、家には多くのセゴビアのレコードがあり、子守歌がわりでした。3歳でギターを始め、翌年には劇場のステージに。8歳で、正式にセビージャ音楽院へ入学しました」
 1988年に岡山で開かれた瀬戸大橋国際ギターコンクールで優勝、以降も来日を重ね、わが国とも縁が深い。
「日本の皆さんは、ギターをとても愛してくださいますね。多くの人が演奏に取り組み、繊細で、音楽をよく理解しています」
 ギター界の未来について「いま必要なのは、若い人がギターを学んでくれること。そして、ギターという楽器の魅力をアピールすること。そんな中から若いスターが育ち、ギター界の土台が築かれていきます」と力説。そして、「音楽家が私の天職」と言い切る。
「幼い時からギタリストになることを夢見て、幸運にも望んだ通りの道を進むことが出来ました。こんなにも素晴らしいことはありません。とてもエレガントで楽しい職業です。多くの街を知り、色々な方と出逢い、心の中が豊かに満たされるのですから…」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年7月号より)

CD
『アンダルーサ』
マイスター・ミュージック
MM-4034
¥3000+税